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食後にコーヒーゼリーを平らげて、俺たちは帰路につく。
猫の柄がワンポイントであしらわれたトートバッグを揺らしつつ、商店街の感想を口にした彼女は、ふと思いついたという表情でこんなことを訊いてくる。
「そういえば、まだ聞いてなかったけど。
轟くんって、何のサークル入ってるの？」
「サークルには入ってない」
「・・・え？」
絶滅危惧種の動物を見つけたような眼で見られた。
「入ってないの？どこにも？」
「入ってない、どこにも」
「それ、学生生活の五十パーセントは損してるよ！」
「参考までに、残りの五十パーセントは？」
顎に指先を当て、首をひねりひねり考える実羽。
どうやらいい加減な数字だったらしい。
「えっと・・・『仲間との友情』とか？」
「『学生の本分は勉強だ』って言ってる人たちが聞いたら怒るだろうな」
「むむ・・・」
やり込められたのがよほど悔しいのか、彼女は子供っぽく唇を尖らせる。
「じゃあ、轟くんは授業以外もずっと勉強してるの？」
「勉強もしてるが、アルバイトもやってる」
「え、サークルに入れないほどアルバイト忙しいってこと？」
実羽は、少し驚いた口調だった。
「いや、そういうわけじゃない」
よほど金に困っているのだろうかと心配されるのは嫌だったので、俺は話を続けることにした。
「俺の実家が病院ってことは知ってるか？」
「うん。
轟総合病院だよね？
全国でも三本の指に入る大病院」
「そうだ。
でも、そのせいで、やっぱ周りからは『将来は親の七光りでエリートコース。金持ちのボンボンは楽でいいな』みたいに見られることが結構あったんだ。
俺の中で医師への憧れは小さい頃からあったんだが、親父の英才教育のせいで母の精神がおかしくなっちまった時期があって。
高一の頃までは親父に反抗するために、医学部以外にいくつもりでいたくらい。
まあ、そんな気持ちを緑谷って奴に救ってもらったんだがな。
だから今は素直に医者目指してるけど、何のバイトもしてないと親父の病院で色々手伝わされそうでさ。
それが癪だからわざとバイト時間増やしてるんだ」
俺の言葉に、実羽は神妙な表情を浮かべた。
彼女の親の職業については知らないが、ふとしたタイミングで垣間見られる育ちの良さからすると、彼女も似たようなことを言われる立場だったのかもしれない。
「そういう実羽はどうなんだ？」
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作者名：ゆん | 作成日時：2018年7月20日 22時
