桜吹雪【轟焦凍】 (ページ20)

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まあ、まだお互いに手探り状態のクラスメートとの関係性を、強制的に進展させるという意味では、悪くない慣例なのかもしれない。

「確かにそうだな。
いい機会だし、役職の割り振りだけでも決めとくか」

「なら、記録は取っておく」

食堂に集まったクラスメートたちが、合宿の際に決めた学園祭担当を中心に、ワイワイと議論が始まる。

「作るもんはこの前決めたけど、反対の奴いないよな？」

「揚げ物だから、機材レンタルでフライヤー手配しとかないとね」

「看板作り、デザインが得意な人はさっさと申し出るように！」

「クラスＴシャツも、面倒だけど作っとこうぜ。
雰囲気作りは大事だよ」

「誰を同じチームにする？
打ち合わせの時間が取りやすいように決めるのが良いかな」

みんなやる気に溢れているな、と俺がぽけっと考えていると、髙橋が俺と実羽の間で視線を往復させていることに気が付いた。

よし、と小さな声が漏れる。

多分、俺にとってはあまりよくない。

「はいはい！」

「ほい、髙橋」

元気よく手を挙げた髙橋を、学園祭担当が指差す。

「轟くんと実羽さんは、二人とも月曜二限が空いているそうです！」

「お。
その時間なら、食堂も場所取りしやすそうだね」

なんだか、先の展開が分かりやす過ぎる流れだった。

「じゃあ、二人で打ち合わせとかしやすいよね？
レンタル品以外の道具の調達とか、お願いできないかな？」

「もちろん！任せて」

実羽は元気よく胸を叩き、「ね？」と俺に同意を求めてくる。

俺は曖昧に頷くことしかできない。

確かに、実羽のことを変に避けたりはしないと宣言したが。

いくらなんでもお膳立てが過ぎないか、と誰にともなく呟いた。

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～274～

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「ごめん、もう来てたんだね」

「大丈夫、まだ待ち合わせの前だ」

「待っちゃった？」

「二十分くらいだな」

「そこは『今来たところ』って言うべき！」

四月も終わりに近づいた、ある週末。

クラスの模擬店に必要な道具を調達するにあたり、「専門の商店街があるらしいし、行ってみない？」と実羽が言い出し、特に反論する理由がなかったので、二人で出掛けることにした。

「ねえ、轟くん」

「なんだ？」

「休日に同級生と会うイベントの王道ってさ、『普段は制服姿しか知らないから、私服にドキドキ！』だけど、大学生だと普段から私服だから有り難みがないね」

・・・なんのこっちゃ。