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花柄が入った薄手のスカートが微かに揺れた。
少し慌てたような素振りで前髪を払うと、彼女はすぐに落ち着きを取り戻したようで、小さな仕草で俺に手を振ってくる。
大人びた顔立ちに、どこか幼さを残した所作。
実羽 真衣、その人だった。
そう。
あの時の少し変わったヤツは、なんと俺のクラスメートになったのだ。
あまりにもでき過ぎで、エイプリルフールの嘘かと疑ったくらいだ。
残念ながら、「ドッキリ大成功！」というプラカードを持ったスタッフは現れなかったわけだけれど。
「こっち、空いてるよ」
そんな言葉とともに邪気のない瞳を向けられてしまうと、わざわざ他の席を探すのも大人げないような気がしてしまう。
これも、ある種の「目力」というやつだろうか。
俺は、彼女の座るテーブルへと向かった。
先輩のアドバイス通り、この時間の食堂は余裕があって、実羽は4人掛けのテーブルを一人で使っていた。
食事の時間にはまだ早いためか、ノートパソコンで作業をしていたらしい。
その側に広げてある大判の冊子は、俺にも見覚えがあるものだった。
「シラバス？」
口から漏れた疑問に、実羽は黒髪を揺らしながら頷く。
髪が邪魔にならないようにするためか、左耳の上あたりで銀色のヘアピンが光っていた。
「うん。
面白そうな講義を見落としてないかなって」
「何コマくらい取るつもりなんだ？」
「今のところニ十ニコマくらい。
六限とかにもうちょっと増やしてもいいかなって」
「よく体力持つな・・・。
普通、十八コマくらいだって聞いたぞ」
「『四月病には気をつけてね』って先輩にも言われたけど、大丈夫！
私、花粉症とかはないし」
四月病って多分そういうものじゃないと思う。
大学生になって、高校生までと大きく変わるところの一つは、授業を自分で選択することだ。
そう受験関連書籍などで読み、心の準備はできていたつもりだったけれど、実際に分厚いシラバスを渡されて面食らった。
このサイズ、もはや鈍器である。
曲がりなりにも総合大学であるので理系文系の双方の講義が用意されており、同じ曜日の同じ時限に限っても目が泳ぐほどの授業がある。
「そういえば、実羽も月曜ニ限取ってないんだな」
「ニ限？
あ、うん。
クラスのみんなが取ってるやつ、一回目のガイダンス出てみた感じだと、教科書読めば自習できそうな内容だったから・・・」
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作者名：ゆん | 作成日時：2018年7月20日 22時
