四獣の王【usss】 (ページ8)

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『うらた様？』

目の前に立つ彼は確かに昼間お会いしたうらた様だが、その肩には獅子の鬣の様な装飾の施された真っ白な羽織を掛けており、いつもとは全くイメージが違った。

私の声に振り返って一度ニッコリと笑うと前を向き直した。前方に伸ばしていた腕を下ろすと、塊を退けていた板が消える。
それが合図かのように塊に向かって走り出したうらた様は、的確に攻撃を繰り出しあっという間に残った塊を倒してしまった。

辺りを見渡し、安全を確認したうらた様はくるりと方向転換しこちらへ歩いてくる。
うらた様が目の前まで来ると、私を包んでいたものがふっと前を開けうらた様と対面する形になる。

「こら！」
『っ！？』

急に怒られるとは思っておらず、つい体が跳ねてしまったが、腰に両手を当て眉間に皺を寄せている姿は小さい子を叱る時のようで怖いとは感じなかった。

「この時間に外に出るのはだめって決まり事だろ？」
『はい、すみません…』

言われることはごもっともで、自分が悪いと分かっていながらもしゅんとしてしまう。

「はぁ…でも、無事でよかったよ」

にっこりと笑って頭を撫でてくれるのは安心するけど、なんだか本当に子供扱いされてるようで、今度は恥ずかしくなってくる。

「やまだもお疲れ様」
「クーン」

うらた様の目線を追って私も上を見上げる。
頭上から降ってきた鳴き声の主はやっぱりさっきのたぬきだった。
うらた様に顔を近づけて何度か撫でて貰うと嬉しそうに笑っている。

『あの、この子はうらた様の…？』
「あー、こいつやまだぬきって言って、俺の妖」
『妖？』
「んー、まぁ平たく言うとさっきの黒いのと同じ類なんだけど、こいつは普通の妖で、さっきのは人の怨念とか生き物の死とかがまとわりついた…悪霊みたいなやつ、俺達は影って呼んでる」
『はぁ…』

信じ難い単語ばかりで頭が追いつかないけど、体験してしまったのだから信じる他無い。
私が一人頭を抱えていると急にぽんっと音が鳴り、音の方を見ると煙のようなものの中から、出会った時と同じ普通サイズに戻ったやまだぬきが出てきた。