四獣の王【usss】 (ページ6)

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夜の顔ページ6

一歩外に出れば、そこは別世界のようで。
夜特有の寒さと静けさにゾッとする。

他の人を起こさないようにそっと戸を閉め、持ってきた灯りで前を照らした。

『すみませ〜ん...どなたかいらっしゃいませんか〜...』

そろりそろりと歩を進めながら、今出る精一杯の声で呼びかける。
体感的にずいぶん進んだと思っていたが、亀のようなスピードで歩いていたようで、実際はまだ二軒分しか進んでいなかった。
でも流石にこれ以上外に居続ける勇気が、私には無い。

あ、あと二軒…あと二軒進んだら戻ろう...

そう自分に言い聞かせてまた歩き出す。

やっとの思いで一件目を通り過ぎる所で、視界の端で影が動くのが見えそちらを向く。

家と家の間を凝視しているとザッと影が飛んできた。

『うわっ！！！』

可愛くない声を出しながら影に押されるまま尻もちを着く。

恐る恐る目を開けてお腹に感じる重みの正体を確認すると。

「きゅぅ？」
『へ？たぬき？』

飛び出してきた影の正体はたぬきだった。
頭に葉っぱを乗せ、もふもふの体には到底必要なさそうな獅子の毛を加工したものを首に巻いている。一応首輪の代わりなのだろうか？

『あなた、どこから来たの？』

当然、言葉が通じることはなく。
たぬきは首をかしげると、スンスンと私の匂いを嗅いできたかと思うと「きゃう！」と鳴いて器用に肩に乗った。

『あなた器用だね〜』

首元に押し当てている頭を撫でてやると、もっとと言うように擦り寄ってくる。

...もっと大きな影だった気がするけど、まぁいいか。

一頻り撫でられて満足したのか、たぬきはそのまま肩の上に座ってしまった。

『ねぇ、あなたのご主人はどこ？自分で帰れる？』

たぬきと目を合わせて問いかけると、一瞬ぽかんとした表情を見せ肩から降りる。
それに合わせて私も立ち上がったのを確認すると、たぬきは歩き始め、一定の距離で立ち止まりこちらを振り返る。

『着いてこいってこと？』
「きゃん」

タイミングよく鳴いた事を都合よく捉えた私は、不思議なたぬきの後をついて行くことにした。