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連れられて部屋を出たけど、私はまだお城の構造を完璧に覚えてる訳じゃない。
反対に、私の前を行く犬は歩き慣れてるからか迷うことなく次々に角を曲がっていく。
見た感じここに住んでいるようだし、後を着いて行けば誰かに会えるだろう…そう思っていた数分前の自分を引っぱたきたい。
『ここはどこ…』
いや、確かに歩きながら「昨日こんなに歩いたっけ？」とは思ったよ？でも凄い自信満々に歩いてるからさ、別の道があるんだと思うじゃん…
『とりあえず戻らなきゃ…おいで？』
ここがどこか分からないなら、一旦元の部屋に戻った方がいい。生憎記憶力はいいので、私は犬を抱き抱えて元来た道を歩いた。
ちょっとはこの犬を叱ってやりたい気持ちだが、腕の中で嬉しそうに尻尾を振られてはそんな気持ちも起きない。
「ケーン、どこにおるん〜？」
あと3回角を曲がれば部屋に着くな〜なんて考えていると、前の角から坂田様が現れた。
「あ、おった。あとAも」
「わん！」
犬は坂田様を見るやいなや腕から飛び出し坂田様の元へ駆け寄る。
『おはようございます。坂田様』
「うん、おはよ〜」
私が挨拶すると、犬を撫でながらゆったりとした口調で返事をする。
目もいつもよりぱっちり開いてない。どうやら坂田様は朝が苦手らしい。
「ケンと仲良うしてくれてありがとな〜」
『いえいえ、私も楽しかったので』
どうやらこの子はケンと言うらしい。
きっと坂田様が飼っているんだろうな。
撫でるのに満足したのか、坂田様は立ち上がると何か思い出したような顔をする。
「あ、そうや。従者がAがおらんって探しとったで〜、うらたさんも話がある〜って」
『え！すみません！すぐ戻ります！』
迎えが来るとは思っておらず、急ごうと会釈をしながら坂田様の横を通り過ぎようとすると腕を掴まれる。
「そんな急がんでもええよ〜、一緒にゆっくり行こうや」
『え、でも…』
「大丈夫やって〜、何か言われたら俺が説明するし、ケンと遊んでくれたお礼もしたいし」
「な？」と首を傾げる姿はさっきのケンと少し似ていて、ペットは飼い主に似る。なんて思った。
『わかりました…』
ちょっと納得はいかないが、お礼なんて言われたら断るわけにもいかないので、諦めて後ろに控える。
「なんで後ろにおんの〜？」
なんでって、私庶民なんだけど…
「一緒にって言ったやろ〜」
私が口を開くより先に私の腕を掴んで歩き出す坂田様。
私、昨日から坂田様に振り回され過ぎじゃない？
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作者名：りある | 作成日時：2023年6月22日 6時
