Miracle de Decembre (ページ1)

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当時、僕は傲っていた。

留学先の韓国でスカウトされて、
「漸く俺の時代が来たか」
と内心ではにやける気持ちが膨れ上がっていた。
周りからも美貌や歌唱力を讃えられ、学校でも人望は厚く、全てを言葉通りに受け止めていた。

それが井の中の蛙だと気づいたのはSMに入ってからだ。
そして、その事実に直面したとき、僕は愕然とした。
今までの賛辞がいかに上辺だけのもので、自分のプライドがいかに薄っぺらな仮面のようなものでしかなかったのか。

本当に気づいたのは、君に出会ってからだった。

―Miracle de decembre―

SMの練習生になることが決まった年の瀬に一人の少女と出会った。
いや、正確にはぶつかった。
連れと食堂に行く途中で、話に夢中になっていたから向こうから来る彼女に気づかなかったのだ。

「あ、ごめん」
「…気をつけてね」

軽い衝撃を感じ、振り向き様に謝れば、紅玉のような唇に黒髪の美少女。
彼女は視線だけこちらに向け、財布か何かを拾うとスタスタと歩いて行ってしまった。

「何あれ、感じ悪いのな。」
「……」
「ハン？」
「いや、何でも」

ハン程のイケメンとぶつかって微動だにしない女なんているんだなー。
と連れが呟いた一言がいつまでも耳に残っていた。

(財布、拾ってあげれば良かった……)

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