Each chapter -KS- ページ36
.
世間の子どもたちが夏休みにはいる頃、
僕にも転機が訪れた。
…お久しぶりです。ギョンスです。
それは一本の電話から始まった。
『よう、元気だったか？』
三つ上の兄である。
用件は二つ。
一度帰省しろということ。
それから、兄さんの会社を手伝わないかということ。
ソフトウェア開発の会社が起動に乗り、新設する部署で働ける、即戦力となるようなプログラマーを探しているらしい。
『折角そっちで身につけた技術を使わないのは勿体ないじゃないか。』
悪くない話だ。
本当の目的は、帰国して両親を安心させてやれということだろうけど。
『三年経ったんだ、もう十分だろ？
…帰ってこい。』
高校を卒業したあと、日本のアニメ(テニプリ限定だけど)好きが高じて日本の専門学校に。
特殊部門だからこその狭き門。
クリエイト系の会社を片っ端から受けたけれど、見事に全敗だった…。
結局アルバイトから始めたこの会社でそのまま働きだしたものの、
『今なら大学だって行けるんじゃないか』
兄さんの最後の言葉が決定打となった。
学年としては同じになるベクやチャニョルだって大卒だし、Aさんの幼馴染さんに至っては院卒らしい。
日本で、しかもこの会社で働き続けるには、今の自分が持っているスペックだけでは不利だ。
…語学教室だもんね。
一方で兄さんの会社でなら、
研修という形で非常勤として働きながら大学に通うことも出来なくはない。
「分かった。でも、急には無理。
会社に相談してみます。
…お盆は帰るから心配しないで。」
電話を切って、Aヌナにメールした。
“相談したいことがあります。
どこかでお時間頂けませんか？”
返信はすぐに来た。
―いいよ、水曜日の夜はどう？
“大丈夫です。お願いします。”
翌週、約束の日が訪れた。
車のない自分を校舎まで迎えに来てくれて、急に現れたAさんにベクが驚いていた。
背中に刺さる視線をスルーして助手席に乗り込む。
…最後くらい俺が隣でもいいでしょ？
行き先はヌナの自宅。
早上がりだし一緒にご飯を作ろうかってことで。
スーパーに寄って韓国食材を買った。
「今日はギョンススペシャルだよ！」
まだ何も言っていないのに、僕の迷いに気づいているみたいだった。
…やっぱり敵わないなぁ。
僕が食べたいメニューばかりがテーブルに並ぶ。
箸が進むにつれてポツリポツリと本音が漏れていく。
ヌナは時おり相槌を打ちながら、最後まで真摯に耳を傾けてくれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ageha(プロフ) - もっちさん» ありがとうございます！アンケートの御礼文を加筆しました。キュンキュンしていただけて何よりです！キャラとか大分崩壊してると思うんですが‥次はどうしましょうかね？(笑)とりあえず裏の続きを書きます(*￣ー￣) (2016年2月6日 11時) (
レス) id: 637dbcfcc6 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - もう、キュンキュンしかない！( *´艸｀)うふふうふふしながら読んでしまったよ＼(^_^)／ (2016年2月6日 10時) (レス) id: c74f559774 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ageha | 作成日時：2016年2月6日 2時
