M's cafe (ページ10)

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#CHEN ページ10

♪。.:＊・゜

ヒョンが家出した。
違う。家を出た。

理由はとてもヒョンらしかったけど、
僕たちは家族なんだから遠慮せず頼ってほしかった。
アパートは三人で暮らすにはちょっと手狭な感じだったのに、二人になるとずっと広く感じて。
最初の夜はいつもヒョンが座るところにイシンヒョンが座って、向かい合って夕飯を食べたけど、

「淋しいね」

って、イシンヒョンは哀しそうに笑った。

そして、３日後。
ピーンポーン、と珍しくインターホンが鳴って出てみれば

「セフナ？」
『僕もいるよ～』
「カイやまで！？」

マンネズが荷物を抱えてやってきた。
隣の部屋から。

「僕たち今日からここで暮らします！」

セフナが宣言して

「よろしくね、艺兴哥哥」

カイもイシンヒョンに挨拶した。
久しぶりに僕ら以外と中国語で喋ったイシンヒョンは急に涙ぐんだ。

「ありがとう、二人とも。これからもよろしくね！」

あとでヒョンに電話して聞いたら、
イシンヒョンがまだ韓国語も拙いときに
マンネ二人から中国語で話しかけられて、
泣いて喜んだのだというエピソードを教えてくれた。
今回の件も、部屋が空くから来ないかと
ヒョンから二人に声をかけたらしい。

『ベッキョン、今リビングに避難してるらしいし。
　二人がこっちに来て、ベッキョンに部屋あげたら？
　って言ったら二人とも喜んでたぞ。』
「そうなんだ？」
『ああ。特にジョンイナは
　イーシンとジョンデのこと大好きじゃん？』
「あー、カレシにしたいってやつ？
　僕はお断りだけどね！」
『そう言うなって。また籠城するぞ。』

それは困る。

『とにかく、引っ越し手伝ってやって？
　ジャージャー麺頼んどくから。』
「え、ヤッター！！しっかり働きます！」

美味しいご飯が待っているなら望むところだ。
元気よく返事をすれば、ヒョンはクスリと笑った。

『俺さ、同級生たちが
　結婚したり昇進したりする度に思ってたんだよね。
　次は俺が自分の店を持って一人立ちするぞって。』
「うん。」
『応援してよ、ジョンデ。
　俺、お前に“行ってらっしゃい”って言ってほしいんだけど。』

知ってるよ、ヒョンが沢山勉強して沢山準備してたこと。
あなたはそうやって背中で僕らに教えてきたじゃないか。

「ヒョン、行ってらっしゃい。」
『おう、行ってきます！』

それでいて誰よりも寂しがりなのも知っている。
だから、仕方ないから。
帰ってきたときには言ってあげる。

「おかえり」

ってね。

♪。.:＊・゜