ダズル 2 (Kei)

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「ただいま帰りました…」









.









一人暮らしのアパート。









私以外、誰も居るはずないのに、

今日こそは、と思って言ってしまう。









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伊野尾先輩がいなくなってから今日で一ヶ月。









最初こそは、ミステリアスな先輩の事だから

私に何も言わず、どこかほっつき歩いているのかと思っていた。









だけど、連絡してみても返事はおろか、

既読すら付かない。









何より、こんなにも長く、

先輩が私を一人にした事などなかった。









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「どこ行ったの……」









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無造作に鞄を放り投げる。









唯一、伊野尾先輩がココに残したものと言えば、

この前、私が先輩に頼んだアイスだけ。









冷凍庫に2つのアイスがぽつりと残っていた。









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「一人で2つも食べれるわけないじゃん…」









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本人からの連絡を待つしかないことは

分かっている。









だけど、もしかしたらもう私に

連絡してこないかもしれない。









.









第一、先輩がココに居るのは、

家が見つかるまでという期限付き。









きっと、先輩は新しい家か、飼い主を見つけて

出て行ったかもしれない…









.









「…っ。」









.









元の生活に戻っただけ。









ただ、大きな野良猫がふらりと

どこかへ消えただけだ。









.









だけど…









伊野尾先輩が居ないだけで、

心がぽっかり開いたみたいで、









まるで、あの日から

時間が止まったみたいだった。









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