ダズル 2 (Kei)

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慧「……さっき、俺言ったじゃん。

“今度は俺に飼われない?”って。」









「へ…」








.









繋がった目線はそのまま。

中途半端にぶら下がった手のひら。









先輩は自分の手の平を広げ、

グイッと突き出してきた。









.









慧「言い忘れてたけど、出て行ったのは

母さんの再婚の事だけじゃなくて、父さんと話すため。」









「え……」









.









慧「ちゃんと話してきた。

家を出ることとか、金の問題とか。」









「……」









.









慧「一人暮らしも始めるけどさ。

俺もAがいないと寂しいし、一緒にいたい。」









「……っ。」









.









慧「だけど、もう甘えてばかりいられねぇし、

自分の足で立ってやり直すと決めたから。」









「うん…」









.









慧「まだ時間はかかるけどさ…

今度は俺に飼われてよ。」









.









薄暗闇の中でなお、

私を真っ直ぐに照らす瞳。









一見眠たそうで、無感情に感じるけど、

それこそが、揺らぐ事のない意思を思わせる。









.









だけど…









「…っ、それは…いつまでですか?」









.









あの時は、先輩の新しい家が

見つかるまで。









だとしたら、飼われるのはいつまでなんだろう。

先輩は、いつか私のことを捨てたりしないだろうか…









.









少し遠慮がちに……

だけど、単刀直入に。









胸のモヤモヤを吹き飛ばしたくて

勇気を出して聞いてみる。









.









慧「へ…」









.









だけど先輩は、いつものように

ぽかんと驚いたように私を見下ろし。









それからイタズラっぽく微笑んで、

ゆっくりと口を開いた。









.









慧「一生に決まってんじゃん。」









.









先輩はくくっと喉を鳴らし、

コテンと首を傾ける。









.









この人はズルい。

本当にズルい。









そんな仕草をしたら、

自分が可愛いって事を自覚してるのだろうか。









.








慧「だから今度は、Aが猫になってよ。」









***

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