【Wrwrd!】推しは眺める派のモブなんですが？ (ページ10)

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3人が屋上を出て行った後、私は立ち上がる。

本当はもう、尻も痛くは無くて。

『…じゃあ、私がヒロインなのかな…。』

なんて考えてしまうのだ。
分からない。本当に。
次は、訳もなく涙が出てくるので、誰に見られているでも無し、と
そのまま涙を流していた。

暫くして、屋上の扉が開くと、またあの3人が入って来た。
美桜さんは片手にハサミを持っている。
3人は私が泣いているのを見て焦っていたが、特に理由も無い為、
平気です。ただ、出てきてしまっただけで、と笑った。

mio「じゃ、じゃあ切るで…！」

今は何をしているのかと言うと、
美桜さんが私の為に髪を切ってくれるそうだ。
もう、私が美桜さんを女だと思わない為、そうしてくれるらしい。

『私が勘違いしなようにしてくれるなんて…。優しいですね。』

美桜さんに笑いかけると、少し頬が赤くなる。
そして、何かボソッと呟いていたが、私には聞こえない。

美桜さんの長い髪にハサミが通っていくと、
綺麗な黒髪が下に落ちていく。
髪を切った美桜さんは、もう立派な男の子だった。

mio「どう、？Aちゃんの為に頑張ったんやで！」

ハサミをその場に置いて、抱き着きに来る美桜さん。

不覚にもドキッとしてしまい、悲しくなる。
モブなのに、なんて考えてしまうから。
本当に、ヒロインになりたくて仕方なく無くなってしまうから。

気付けば作り笑いで話をしていた。
先に戻っておくと言うゾムの背中を眺める。
グルッペンは何かを察していたようだったが、何も言わずに
ただ、私を見つめるだけだ。

その瞳は酷く悲しそうで、哀と、愛が込められているような。
先程まで楽しそうだった美桜さんも、無言で空を見ていた。

gr「さっき、保健室へ行くからと言って、俺達に着いてこなかったよな。」

グルッペンが、ボソッと呟くと、美桜さんもこちらを向く。

美桜さんの目は、傷付いた子猫を見るように優しい。
暫く私を見つめていたグルッペンだったが、俯いてしまう。

それに関しては、答えられないから。

『私、次は好きな科目なので戻りますね。』

グルッペンと美桜さんに、そう告げて屋上を出て行った。

『家、帰ろうかな。』

転生した当初は、ワクワクして仕方が無かった私も
モブの立場の辛さに改めて気付く。
主人公になれていたら何か違ったのか、なんて。
見ているだけで幸せだった推しに、恋愛感情を持ってしまうから。
モブはただ辺りで騒いでいるだけで良いんだ。
なのに、君達が優しくするから。