【Wrwrd!】推しは眺める派のモブなんですが？ (ページ1)

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スマホに電源を入れて、イヤホンを耳に付ける。
YouTubeを開けば、おすすめには実況者しか出てこない。

『さすがおすすめ…。分かってらっしゃる…。』

そこから適当に動画を選んで、スマホをポッケに入れると
私、錦戸Aは元気良く家を出た。

kn「あっはっはっ！www」

私の大好きなゲーム実況者【⠀我々だ！】の動画を聴きながら
高校へ通うのが私の日課。そして聴く動画は絶対に笑点だけだと決めている。

何故かって？

なんとなくだよ！←

『クレアおばさんのシチューの秘密～♪』

ふんふんと小さな声で歌いながら、赤信号で止まる。
ちょうど、笑点は次のお題に入るところで、少しワクワクしていた。

「……て！…ちゃ…め！…！」

するといきなり周りがザワザワしだして、一体何事かと思う。
隣を見ると、涙を流しながら何か叫んでいる女の人がいた。
その女の人が向いている方向を見ると

まだ3歳くらいの小さな男の子が、道路に飛び出していた。

『…へ？』

何をするわけでも無く、突っ立っていた男の子のもとに
その子の何倍もあるような大きなトラックが走って来た。

『ダメッ！！！』

頭が追いつくよりも先に体が動いている。
そういうことが、時々ある。

今もまさにそうで、気付けばその子のもとへ走っていた。

トラックが目の前まで来た時。
何とか男の子を歩道の方へ押し飛ばした。
だが、それと同時に、今まで感じたことの無い感覚に襲われる。

体中が、とても熱い。

泣き叫ぶ子供の声と、助けを求める人々の声と。
微かに聞こえてくるその声で、自らの死を悟った。
意識が朦朧として、上手く息が出来なくなっていく。

そんな状態でも、どうしても我々だのことしか考えられないのだから
本当に自分はどうかしているのだろうか。

可笑しいなぁ。本当に。
頬を、生温かい何かが濡らしていく。
もう、痛みさえも感じなくなった私が、最後に聞いた言葉。

ut「貴方がもし、転生してしまったら？」

そこで、私の意識は途切れた。