ファーストレディー【国見英】

第9話 ページ10

『国見、最近元気無いね。何かあったの?』


あれから数日後、先生がそう言った。
心配そうに俺を見てくる。


…その原因は、先生なんですけど。


そう思いつつ黙っていると、さらに表情を曇らせ、顔を近づけ聞いてくる。


『なんで、黙るの?私には言えないこと?』


…いや、そもそも貴方の事なんですけど。

こういう時は“教師”になるからなぁ、先生。
まぁ、俺との関係は言っちゃ悪いけど教師としてはアウトなんだけど。

これ以上詳細されたくなくて、「別に、何でもないです」と答える。


俺の返答に先生は、ムッとしたように顔を離した。
だがすぐ、その距離はゼロになった。


「……っ、………先生、ここでしないでください」
『だって、国見は私とキスしたら大抵喜ぶでしょ』


今だって、嬉しそうな顔してるよ


先生の指摘に、思わず顔を隠した。
…先生は、なんでこんなに余裕なんだ。
この人に照れるって感情は無いのか。

またしても黙る俺を先生はじぃっと見つめ、やがて声を発した。


『…国見、疲れてるなら、する?』


その言葉に勢いよく顔をあげる。
その先には、優しく微笑む先生の姿があった。


　する? という言葉で大体予想はつくだろう。


これは、先生の「お誘い」だ。


俺達も一応は恋人関係にあるため、当然…そういう事はする。


でも、一線を超えた事はない。
いつも少しの行為で終わる。


先生と一緒にいるためには、そうするしかない。




―――それでも、先生からの誘いは毎回嬉しい。




先生が俺を求めてくれるから。
「好き」と言ってくれるから。


だから勿論、



「…はい。お願いします」



俺の答えは、OKだ。



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