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ビリビリに破かれ、塵箱に捨てられた銀の託宣だった物を見て、ため息をつく。
「非道いねぇ、せっかく君の為に用意したのに」
悲しそうに顔を手で覆い、すんすんと嘘泣きをするが、何をしているのか分からない、といったような目で見られて流石に心が痛くなってくる。
だが、そんな茶番も修治の言葉で凍り付いた。
「俺のため?じょうだんだろ、森。あの紙を俺にわたしたのはポートマフィアのためだろ」
硝子玉のように澄んだ灰色の瞳
それは不気味な程に何の感情も写さない、空っぽなものだった
「……何故、そう思うのかね?」
「………何年いっしょにいると思ってるんだ。それくらいわかるぞ?」
呆れたように、だが実際は表情が少しも動いていないので声で感情を判断する。
「……君がこの組織に入ってくれれば、私は大変助かるのだけれどねぇ」
ため息をつき、そう溢す。
これは、紛れもない本心である。
「森はかしこいから俺がいなくてもだいじょーぶだろ」
何でもないようにそう云う修治に目を見開き驚愕する。
普段、修治という人物は太宰以外滅多に称賛したりはしない。
故にその言葉は紛れもない本音だと理解できてしまう。
「……それでも、何人か構成員を連れて行きなさい。羊を運ぶのに必要だろうからね。……いいね?」
聞かなかったふりをして、そう云うと不服そうに頬を膨らませる少年。
当たり前だ。
自分より弱く、守らなければすぐ死ぬような者など戦場に置いて邪魔なだけだ。
しかし、これ以上我が儘は許さないと云ったような目で見詰められれば頷くしかないのである。
「……わかった。……あ、そうだ森。一つ云いわすれてた」
「…?なんだい?」
「森と治は、まったくにてないぞ?森より治の方がかわいげがある」
そう呟くように云ってから修治がドゴンと音を立てて突き破り、走っていってしまった金具が外れかけたドアをしばらく無言で見たあと。
「…っ……ふっ、ふふふふっはははははっ。そ、うだね。ふふっ。君がそう云うのなら、ふふふふっ。似て、居ないんだろう。ふっ。ははははは!!」
盛大に、診察室から笑い声が聞こえた。
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ロト - よみさん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただけてとても光栄です。続きが気になる作品だったなんて本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
よみ - 受験頑張って下さいね。とても、面白くて、続きが気になる作品だと思っているので、早く二月になれ!っと祈りながら、更新お待ちしております。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 587f0ad974 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロト | 作成日時:2019年8月1日 18時