第十二章 絶え間なく過去へ押し戻されながら (前編) 壱 ページ43
喉が痛い。腰も痛い。昨晩何があったのかは聞かないで欲しい。兄妹でするには相応しくない事...他人に云うには憚れる事をしていたのだから。
私は隣で...同じ布団の中でぐうすか眠りこけている治の蓬髪を撫で付けた後、ふと一昨日脱ぎ散らかしたドレスの方を見た。
治はあんな風に行ったけれど、招宴に着て行くには最適のドレスだと思う。だから取って置いても良いだろうと手に取って...ふと違和感に気付いた。縫い目でもない糸がスカァトの部分に走っていたのだ。私は不審に思ってスカァトの裏を覗いた。
...紙が取り付けてある?
私は糸を歯で食い千切って、紙を取った。
紙になんと書いてあるのか。
私は一瞬にして目を奪われた。
【太宰A
右の者
北米異能集団『組合』並び地下組織盗賊団『死の家の鼠』に拐かされる恐れがある事をここに記す。
十分に警戒す可。
鴎外】
私はクシャリ、と紙を握り潰した。
_______________________________
「同棲なんて聞いてませんよ!」
今朝一番に
社内で響いたのはそんな敦君の叫び。
私は漫画の内容を大凡覚えていたから、その会話の殆どを無視して書類の整理をしていた。要点に付箋を貼って、文の添削をして...。
兄は此の手の報告書を書く事があまり得意ではない。...私自身、頭を動かし人を動かす彼には向かない分野の仕事だとは思っているし、書類仕事しか取り柄の無い私に回されて当然の仕事だと思っている。けれど押し付けられるのは違うと思う。
「おい太宰。早くマフィアに囚われた件の報告書を出せ」
「A、私の分も書いておいておくれよ」
「お生憎様!私はもうとっくに書いて提出したのよ」
「そういうことだ。早く提出しろ太宰」
「...ちぇ。昨晩の寝台の上の君は最高に可愛かったのに」
治のその当て付けのような一言に、社内が騒然となった。弁明の余地など無くて、私の顔に熱が灯った。きっと今の私の赤面が、社員に更なる誤解をさせているに違いない。
「だ、太宰、お、お前真逆、到頭...!!」
「だ、太宰さん...!?」
独歩と敦君は特に顔を赤くして慌てふためいている。誤解が急速に進んで行く。
更に事態をややこしくなったのは新人泉鏡花___能力名『夜叉白雪』...の一言だった。
「...二人は近親相 姦の仲なの?」
嘘でしょう?事態が収集出来ない。
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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時