弐 ページ22
「やるねえ、じゃあ国木田君は?」
「止せ、俺の前職は如何でも___」
「うーん、お役人さん?」
「惜しい。彼は元学校教諭だよ。数学の先生」
「へええ!」
「昔の話だ。思い出したくない」
過去に何かあったのだろうか、よく知らないが詮索すべき事ではない。私はパフェを食べ終えた。
此の流れだと...。
「じゃ私達は?」
矢張り。
兄は敦君に問うていた。敦君の琥珀色の瞳が、治の胡散臭いと思わせない笑顔と私の瞳を交互に見較べる。
想像もつかないらしく、敦少年は頭を悩ました。
「無駄だ、小僧。探偵社の七不思議の一つなのだ、こいつ等の前職は」
「最初に中てた人に賞金が有るンでしたっけ」
「そうなんだよね。誰も中てられなくて懸賞金が膨れ上がってる」
治は私の頬についていたらしいクリームを親指で拭って、其れを見せつけるように舐めた。初な敦君と谷崎君はカァッと赤面になっている。
私?私は....もう、慣れたわ。此の手の事には。
「太宰!嫁入り前の妹に破廉恥な真似をするな!
...ッたく、俺は溢者の類いだと思うが、こいつは違うと云う。しかしAは兎も角、こんな奴が真面な勤め人だった筈がない」
独歩、中り。私は内心で正解を出していた。
敦君は早速遊戯に参加したが、研究職だの工場労働者だのと見当違いも甚だしい職ばかり云って兄を早速辟易させていた。
そもそもあんな痩せぎすに力仕事が務まる訳がないだろうに。
「お二人は同じ職業に就いていらしていたんですよね?」
「ええ、そうよ」
「だから本当は浪人か無宿人の類だろう?」独歩、私の事を貶してる訳?
「違うよ。この件では私は嘘など吐かない....あぁ、A。決して
「わかってるわよ。其れ耳に胼胝ができる程には聞いてるわ」
治は席を立つ際に、私の頬に接吻を一つ落してから店を出て行った。
敦少年は見慣れた事の無い光景にすっかりあたふたしている。
「太宰さんとAさんて本当に仲が宜しいんですね...」
「えぇ...見苦しいかもしれないけど目を瞑ってあげていて。
あの子が“ああなって当然の事、私
「...え?」
私の云っている意味が分からなかったようで、全員が小首を傾げていた。
...私達は日々、罪を被り続けて生きている。そしてその十字架の重みに潰されないよう生き続けるのだ...。
私と彼は、少なくともそうして今まで生きていた。
参→←第五章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス (前編)壱
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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時