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先程まで座り込んでいた場所を見て驚きを隠せなかった。

私はその展開を知っていたというのに(、、、、、、、、、、)

敦少年は自ら、爆弾に覆い被さっていたのだ。彼が首に巻いた黒いネクタイの下のデジタル時計が残り二秒を差していた。


「莫迦!」治が思わず声を上げた。私だって、猿轡をされていなければそう叫んだに違いない。


けれど、デジタル時計はもう『00』と示していた。敦君は来る衝撃に備えてか目をぎゅうっと瞑っていた。待てども待てども衝撃は来ないのだが。

不思議に思った彼が恐る恐る目を開けた時、そこにはきっと探偵社員である私達が立っている姿が目に映ったであろう。


「やれやれ…莫迦だとは思っていたが、これほどとは」

「自 殺愛好家の才能があるね彼は」

「へ?....え?」


 「ああーん兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」

「痛だっ!?いい痛い痛いよナオミ、折れる折れる、って云うか折れたァ!」


表に姿を現したナオミちゃんに体当たりにも近い抱き付きを繰り出され、谷崎君は泣き叫んでいた。

その混沌とした状況に「...へ?」と敦少年が素っ頓狂な声をあげる。


「小僧、恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」

「そう云うことだよ敦君。つまりこれは一種の___入社試験だね」


兄が私の拘束と猿轡を解いた。見逃せないのは、その猿轡の行く先が彼の外套の衣嚢だったことだろう。その行く末が洗濯機である事を願う。切実に。
其れがこの先変態的な用途でない事を信じる。異能力『走れメロス』の名の下に。


 「入社、試験…?」

「その通りだ」


社長室から現れたのは設定上、此処には出張中でいなかった筈の武装探偵社社長福沢諭吉___能力名『人上人不造(ヒトノウエニヒトヲツクラズ)』だった。

熟練の雰囲気と威厳ある佇まいは見たものを圧巻させる。今日も和装がよく似合っている。


「そこの太宰めが『有能なる若者が居る』と云うゆえ、その魂の真贋、試させて貰った」

「君を社員に推薦したのだけど、如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内で揉めてね。で、社長の一声でこうなった、と」

「で社長……結果は?」


社長の鋭い瞳が敦少年を見据える。

...その鋭さたるや凄まじいもので。一介の女学生なら泣いて逃げ出すであろうというものだった。

その目がゆっくりと閉ざされる。


「太宰に一任する」静かに、しかし力強く。

陸→←肆



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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時

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