参 ページ17
「ほんっとサイアク」思わずぶっきら棒に呟いてしまったのを許して欲しい。
隣で贋物の爆弾の起爆装置を持った谷崎君が「まぁまぁ」と何とか私を宥めようとするのを試みている。
「終わったら『うずまき』でとことん付き合いますから。ね?」
「...谷崎君てば、本当いい子」
「ハハ、そう云っていただけると嬉しいです」
失礼します、と谷崎君が私の口に猿轡を嵌めた。その様子をナオミちゃん羨まし気に見ている。
結局私の腹の虫の居所が治まる前に、受験者の敦君が来て、入社試験が始まった。
やるからには徹底的に、と私は嘘の涙さえ目尻に浮かべた。終わったら兄を蛸殴りにしようと決意も固めた。
「嫌だァ…もう嫌だ…ぜんぶお前等の所為だ…『武装探偵社』が悪いンだ!」
「社長は何処だ、早く出せ!でないと___」谷崎君が私の胴衣を掴んで引っ張った。私はくぐもった小さい悲鳴を上げておく。
「爆弾で皆吹っ飛んで死ンじゃうよ!!」
私の隣にはこれまた贋物の高性能爆薬がある。昨日、兄が執念深いストーカー女から賜ったものだ。自宅の方に被害が出ていないので私には関係ないが。
暫くすると、生垣の向こうから独歩が姿を現した。
「おい。落ち着け、少年」爆弾魔役の谷崎君を刺激しないように飽くまでやんわりと、だ。
「来るなァ!吹き飛ばすよ!」
谷崎君は起爆装置を飾し、独歩を脅す。独歩はサッと両手を上げた。
「知ってるぞ…アンタは国木田だ!アンタもあの嫌味な『能力』とやらを使うンだろ!?妙な素振りをしたら皆道連れだ!」
...実は私の異能力を使えば此の程度のいざこざなど軽く納められるのだが、これは飽くまで入社試験。私のすべき事は只々人質役に徹するのみ。
また暫くして、今度は本命の敦君が姿を現した。何故か古新聞をメガフォン代わりにしている。
「や、やややややめなさーい!親御さんが泣いてるよ!」
泣きそうなのが彼本人なので少しばかり呆れたが口には出さない。というか猿轡の所為で出せない。
「な、何だアンタっ」
此の手の事に今まで縁がなかったであろう敦君は谷崎君の動作の度に身体を跳ねさせた。
「ぼぼ、僕はさ騒ぎをき聞きつけた一般市民ですっ!いい生きてれば好いことあるよ!」
「誰だか知らないが無責任に云うな!みんな死ねば良いンだ!」
「ぼ、僕なんて孤児で家族も友達も居なくてこの前その院さえも追い出されて、行く宛も伝手もないんだ!」
「え…いや…それは」谷崎君が引いている。
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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時