弐 ページ16
「Aかい?Aはだね...」
『あ、そう。其れと今朝牛乳切らしちゃったから帰りに買って来てもらえる』
「...」
「あろう事か、死にかけていた私に使いを頼み込んで来たのだよ」
敦の目に彼の冷めた美人が冷めた表情、冷めた口調で実兄に使いを頼む姿が浮かんで来た。
「まあきっとその言葉の裏には、私に習慣的に牛乳を飲んですくすく育って欲しいと云う聖母の如き母性溢れる御心が」「太宰さん。多分その言葉にそれ以上の意味なんか無いと思いますよ」
敦は常識を超えた太宰の妹に対する愛情に常識を覆させられそうになっていた。もしかしたら、世間の兄が妹に向ける愛情などこんな物なのかもしれない、と。
「ところで今日は何処へ?」
町に連れて行かれた敦が訊ねると、太宰は「君に仕事を斡旋しようと思ってね」と答えた。
「本当ですか!」
「伝手の心当たりがあるから先ずは探偵社に行こう」
太宰が己の胸の前で手を翳す。
「任せ給えよ、我が名は太宰。社の信頼と民草の崇拝を一身に浴す男(実際に浴しているのは文句と呪いと苦情の電話なのだが)」「ここに居ったかァ!」
後方から怒鳴り声が聞こえて来た。先日散々聞いたものだ。
「この包帯無駄遣い装置!」
「...国木田君、今の呼称はどうかと思う」どうも太宰はそこそこ傷ついたらしい。
「この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!早く来い!」
「朝から元気だなあ。あんまり怒鳴ると悪い体内物質が分泌されて、そのうち痔に罹るよ」
真面目な国木田が真に受ける、太宰がからかう、国木田が太宰をしばく。
一連の茶番に敦は付き合ってやった。その目は茶番劇を終える頃にはすっかり冷めた物にになっていた。
「あの....『非常事態』って?」
太宰に固め技を決め込んでいた国木田が手を離す。
「そうだった!探偵社に来い!人手が要る!」
「何で?」
国木田が神妙そうに報告する。
「爆弾魔がAを人質に探偵社に立て篭った!」
「何だって!」実際彼が彼女がそうなるように仕向けたくせに、白々しいにも程がある太宰であった。
「Aを人質に取ろうなんて不埒な輩がいたものだ...生まれて来た事を後悔させてやる!!」
「何故Aが関わるとお前の意欲は増大するのだ!そう云う事ではなかろう!
Aは異能力者、そんな彼奴を人質にするなど心して懸からねばならん」
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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時