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8.認めてもらえるかな…? ページ9

任務当日、私たち突撃隊は現場に控えていた。

「状況を見計らって突撃する。

いい?1つも残さず罠を発動させて」

静かに頷く突撃隊の隊員。

私は傷が完治しないまま突撃隊隊長として任務を受けた。

「幹部とその小隊を罠如きに殺させないのが私達の役目。

それを忘れないように」

興奮剤でもあれば、幾分か楽なのに…

などと考えている内に、好機(チャンス)は舞い降りてきた。

人の気配が消えた。

全員が奥へ引っ込んだのだ。

インカムから指示が来る。

《頼んだよ》

「今だッ!突撃ぃぃ!!」

私を追い抜かし、先を行く隊員。

直ぐに体が飛び、舞い散る赤。

地面に叩きつけられる仲間…。

若しも、私に心が無かったら、綺麗だと思えたかな?

散っていく無数の生命(いのち)。削れていく精神。

脳に浮かんでは消える…兄さんの後ろ姿。

「うわああああああああああああああ!!!」

殆ど意識は無かった。

叫び声が聞こえる。喉が痛む。

私の声だ。私の精一杯の命の叫び。

何かが外れる音がして振り向く。

鎌だ…天井に吊るされた大鎌がこちらへ向かってきている。

大鎌は私の腹を貫き、壁に突き刺さる。

口からごぱっと鮮血がしぶいた。

何故か一気に冷静になっていく頭。

「終わった…罠が発動しない」

未だに気が狂った隊員が走り回っているが、何も起こらない。

壁を叩いても、地団駄踏んでも、何も起こらない。

最初から隊員が莫迦みたいに騒いでいるだけのように静かだった。

血が失われ、意識が遠のいていく。

「褒めてよ…兄さん…私、役に立った…でしょ?」

窓からは月が覗きこんでいた。

哀れむように私達を照らしていた。

「……綺麗…だなあ…」

そういえば、大鎌に貫かれる前、誰かの異能が発動された気がする。

まぁもうどうでもいいか。

兄さんの期待に応えることが出来たなら、私はそれでいい。

幹部とその小隊が入ってくるのが見えた。

濁流のように奥へ進んでいった。

誰かが近寄って来る。

見えない…視界が真っ赤だ。

誰だろう…?判らない…誰だろう。

そっと閉じた目尻から、涙が一筋流れる。

暖かい涙だった…。

完全に意識が途切れる寸前、声が聞こえた気がした。

それも暖かいような気がしたが、私には何を云ったのか判らない。

でも、とても暖かくて、踊りだして仕舞いそうなくらい嬉しいもののような気がする。

だから私は微笑んだ。

心地よくて…余韻に浸りたくて…

「お疲れ様…お休み、A」

謝罪します!申し訳ない!!→←7.私は何だろう?※暴力



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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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