26.【死亡エンド】また逢おう ページ34
真っ暗な空に、星々が輝いていた。
月は蒼く光り、月下の街を照らしていた。
そんな夜、一つの命が消えようとしている。
****
崩れた屋敷の近くに、黒い車が止まった。
その中から慌ただしく、包帯を巻いた男が出てきた。
屋敷の外には、煙草を咥えた黒い帽子を被った男。
その男に近付くと、気配に気付いたのか、顔を上げた。
「よォ太宰。手前の妹は中だ」
太宰と呼ばれた包帯の男は、酷い息切れを起こしていた。
屋敷の中へ駆け込むと、天井に空いた大きな穴の下に、1人の女が倒れていた。
赤い絨毯(ジュウタン)…いや、血溜まりの上に寝ていた。
「…A?」
太宰はそっと呟く。
女はAと呼ばれたが、反応は返さなかった。
既に手遅れだったのだ。
「A、一体何が…?」
もう少し近付こうと足を踏み出せば、ぴちゃりと水音が鳴る。
多くの布で傷口を隠され、止血帯まではめられている処を見ると、中原が必死に止めようとしていたのが判る。
そっと手を重ねると、Aの体温が感じられる。
「あの時と…同じだ」
Aの手はとても冷たく、温もりなど微塵も無いようだった。
「済まない…何も云ってあげられなくて…。最後くらい、傍に居てあげたかった」
冷たくなった手を握り、震える声で語りかける。
何も返事はない。
もう誰の声も聞こえなかった。
ただ、月明かりに照らされた兄妹が、いつまでも手を繋いでいた。
****
形の整った石が多く並ぶ墓地。
その中に、太宰は立っていた。
「A、君は優秀な部下だった。訓練をすれば、使える部下になった。
私の自慢の妹だ」
太宰が立っていたのは、妹である太宰Aの墓の前だった。
そこには花束が置かれており、風になびいていた。
「私ね、友人に元気水炊きなる料理を振舞ったのだよ。
君にも食べてもらえば善かったね」
墓石の近くに腰を下ろし、空を見上げた。
「いい天気だねぇ…自 殺日和だ。
……君の部屋、綺麗に片付いていたよ。何も無い、初期の部屋に戻っていた」
太宰の目には何の感情も無かった。
正確にはあったが、無いも等しいものだ。
「写真、一つも無かったよ。君が生きていた証拠が、何一つ…残っていなかった」
悲しみが滲み出した。
握り締めた太宰の手には、月のネックレス。
Aが隠して着けていたのを見付けたのだ。
「また、何処かで…」
それ以上、口を開かずに黙って目を閉じた。
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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時