22.初めての訓練 ページ29
初めて兄さんに抱き締められた。
初めて兄さんの思いを聞いた。
『妹としては、大事にしている心算だよ』
素直に嬉しかった。心が踊るようだった。
けれど、私には嘘にしか聞こえなくて、兄さんを信じる事が出来なかった…。
****
初めてAを抱き締めた。
初めてAに本心を打ち明けた。
私の本音だったのだ。本物の思いだったのだ。
『そう云ってもらえて嬉しいです。ですが、幹部と構成員な事は変わりません』
けれど、Aには伝わらず、偽りで終わった…。
間に溝が出来たままで、埋まることはなかった。
もっと素直になれていれば、Aに伝わっただろうか。
この思いは、Aに信じてもらえただろうか。
****
兄さんに腕を引っ張られ、連れて行かれた。
着いた場所は訓練場。
いつも芥川が相手をしてもらっている場所だ。
「幹部…何故ここに?」
「使えない頭脳を持った君でも、説明無しに判ると思ったのだけれど…」
兄さんは私と反対の所へ立ち、向き合った。
何となく理解はしているが、その理由までは判らなかった。
「訓練だよ。私が相手をしてやる。その代わり、本気で来るように」
目が本気だ。
いつも私に説教をする時、決まってこの雰囲気だった。
今は反抗が許されている。
やるしかない…。
「…判りました。どういう風の吹き回しかは想像がつきませんが、此処で1本取ったら…」
認めてください。
そんな事、まだ云えない。
「……撫でてください」
「……………………………は?」
あぁ違う。そうじゃない。これじゃない。
何か云わねばと思い代わりに出た言葉がこれだった。
恥ずかしい。穴があればそこに埋めてほしいくらいだ。
内心冷や汗たらたらで、心臓を抉り出したくなるような気持ちだ。
「いや、何でも」
「判った。いいよ」
「…………え?」
意外な返答に思考が停止する。
「何?早くき給えよ」
兄さんは既に腕を組んで仁王立ちをし、私からの攻撃を待っている。
此処で1本取れば、兄さんから…褒めて……
「い、行きます…!」
すぐさま兄さんに飛び掛った。
兄さんの隣に並べるような人間になる。
私の目標を叶える好機(チャンス)。
逃す訳にはいかない…!
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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時