【文スト】素直じゃない兄【太宰】 (ページ3)

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２.仕事中の兄にはご用心ページ3

任務を失敗すれば、罰が待っている。

それが恐くて、失敗しないように気をつけるけれど、一向に成功しない。

そもそも、訓練を受けさせて貰えないことに不満を感じる。

あの芥川だって受けてるのに…何で私だけ…。

そんな私が、任務の失敗よりも恐れるものがある。

それは……

「あれ…兄さん？」

暗い夜道。

1人屈(かが)んで何かをしている兄を発見した。

様子が気になり、近付いて行く。

「兄さん、其処で何をして……ッ！？」

何してるの？…そう云う前に、顔の横を何かが通っていった。

ヒリヒリし始める頬にそっと手を添えると、指先に血が付いた。

兄を見やると、先刻まで屈んでいたのに、今はもう立っている。

私に銃を向けたまま…。

「何って…見て判るだろう？判断力の無い子は嫌いだよ」

靴を鳴らしながら私との距離を詰めてくる。

直ぐ目の前で立ち止まると、私の眉間に銃口を押し付けた。

あぁ、私は今から死ぬのか…兄さんの嫌いな判断力が無い子だから…。

けれど、兄さんは一向に引き金を引こうとはしない。

不思議に思って見上げてみるも、兄さんの表情から感情は読み取れ無かった。

「…許しを乞えば見逃してあげるけど…

如何するんだい？」

見逃す？見逃すって云った？

兄さんの口から珍しい単語が出てきて、軽く混乱する。

微かな希望に縋り、ほぼ無意識に口を開いていた。

「御免…御免なさい…判断力の無い無能な部下で、御免なさい…」

兄さんの口角は、ゆっくりと上がっていった。

「まァ好いだろう…」

銃が放された途端、後頭部に刺激がきた。

「ぐあッ…！？」

ぐらりと視界が揺れ、意識が遠のいていく。

足から力が抜けていき、前方へと倒れる。

せめて顔を見ようと後ろを睨みつけるが、ぼやけてピントが合わない。

だが、赤みがかった髪に黒い帽子を被せた小柄な男だという事は判った。

こんな奴…ポートマフィアに居た…？

思考を巡らせ、思い出そうとする。

服装的に上の人だ。そして、兄さんに頼られている…。

ムカつく…ムカつく…強いだけの癖に……

…強いだけ？強さ以外に、私は何を求めている…？

其処で意識は途切れた。