1.あァ…本当に使えない ページ2
「又任務を失敗したのかい?」
上司である太宰治、私の実の兄だ。
今は部下として任務の報告に部屋を訪れていた。
「…すいません」
視線を落として、反省の色を見せてみるが、兄には一切効かない。
寧(むし)ろ、逆効果かもしれないのだ。
音を立てて席を立ち、私の方へ近づいてくる。
コツ…コツ…と、ゆっくり歩み寄ってくる音は、私の恐怖心を湧き上がらせていく。
遂に目の前まで来た。
とてつもない殺気を纏った兄は、悪魔よりも恐ろしく見える。
そっと私の頬に手を添えてくる。
びくりと肩が揺れるが、それには何も反応を起こさなかった。
そのまま、するりと下に下がってきた手は、私の頸を締め上げる。
「うッ…く、るしっ…!!兄さッ……!」
「本当に役立たずだね。君こそ要らない子なんじゃないかな?」
冷たい氷のような瞳で見下ろされ、棘がグサグサと刺さってくるようだ。
心臓辺りがキシキシと音を立てている。
「任務に成功した事はあるかい?無いだろう」
「あ"ッ…!」
膝ががくがくと震える。
力が抜けていき、資料を落とす。
兄さんの手を自分の頸から引き剥がそうともがくが、更に力が加わっただけだった。
「兄……さ…ん」
今度は視界が揺らぎ始め、意識が遠のいていくのを感じる。
もう駄目だ…
腕から力が抜けて、重力に従って落ちた。
ぶらりと揺れる自分の腕に、もう力は入らなかった。
御免なさい…御免なさい…
頭の中で繰り返しながら意識を手放した。
起きた時にはもう誰も居なくて、私だけが床に転がっていた。
自室に戻り、鏡を見ると、くっきりと残っている手形が私の頸に巻き付いていた。
改めて思う。
兄さんは私の事が嫌いなんだと……。
「如何して…」
もう、涙さえも出なくなってしまった。
こんなに悲しいのに…苦しいのに…
泣けないのは何故だろう…。
出来立ての痣にそっと触れながら、鏡の中の自分を見つめていた。
96人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時