Act.10《足掻き》 ページ14
プルルル、プルルル──
「もしもし。」
仕事中なのだろう、微かに無機質さを含んだ堅い声。
私が手元に握っている連絡先─中原中也さんのものだ。
『もしもし。Aです。突然、申し訳ありません。』
「構わねェよ。どうかしたか?」
『…太宰さんの事で、ご相談があります。』
太宰、その名前を出した瞬間受話器の向こうで中也さんが強ばるのが判る。
「A、この前の続きの事だろ?」
『はい。お時間頂けないでしょうか。』
「仕事も一通り済ましたからな。直接会わねェか?」
『ありがとうございます。お願いします。』
「11時ごろ、大通りのカフェで待ってるからな。」
それじゃと電話は切れた。
此処まできたら、後戻りなどできない。
真実がどんなものであれ、受け入れなくては。
──午前11時 大通りのカフェ
お洒落なテラス席に帽子を被った姿を見つけ、駆け寄る。
「よお、元気そうで何よりだ。」
『こんにちは、中也さん。お待たせしました。』
「ンな待ってねェよ。まあ、座れ。」
勧められた席に失礼しますと腰かけた。
「いきなり本題なんだか……手前が孤立した原因は太宰だ。太宰がそうなる様に仕向けた。」
『そう、ですか。』
ドクドクと呼吸が速くなるのを感じる。
「その反応を見ると、手前も何となくは察していたか。」
『はっきりと疑問に思い始めたのは今朝からです。よくよく考えてみれば、全て太宰さんが中心に居るんです。』
「やっぱりな。…Aは此れからどうするつもりだ?」
太宰さんから離れるべきなのだろう。
けれど、頭に浮かぶのは優しくしてくれた太宰さんとの思い出ばかり。
『中也さん。私、やっぱり…………。』
「ねえ、Aちゃん。中也と何話してるの?」
その声が聞こえた瞬間、辺りが凍りつく。
声のする方を見ると、無表情で立っている太宰さんが居た。
「て、手前!何故、此処に……ッ!!」
太宰さんは、焦って立ち上がる中也さんに目もくれず私の処へ真っ直ぐ歩いてくる。
「ねえ、聞いているんだけど?」
手の震えがカタカタと止まらない。
太宰さんはその手首を荒々しく掴むと、引っ張り上げた。
「Aちゃん、帰るよ。」
中也さんの制止も聞かず、家に向かって歩き始めた。
私の手首はキリキリと音を立てそうな位、掴まれている。
『太宰、さん……ッ!!』
痛みに腕をくねらすと、更に掴む力が強くなった。
もう、戻れない。
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ぽむぽむ(プロフ) - 秋葉さん» ありがとうございます!!どちらも読んでいただけて嬉しいです(*´-`)感動です!!! (2018年4月23日 1時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)
秋葉(プロフ) - どっちのエンドも最高でしたあああ!!すっごく好みでしたー! (2018年4月22日 14時) (レス) id: 5709606bf2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむ(プロフ) - 素敵帽子くんさん» 返信遅くなってしまい、ごめんなさい!!ハマってしまった……なんて嬉しい言葉!!感激です(*´-`)ありがとうございます!! (2018年4月20日 21時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子くん - 太宰さん…エr(((殴 ラスト2つあるのに両方とも読んで一人で「はぁぁぁ!!!」ってなってました←変態 ハマってしまいました( 〃▽〃) (2018年4月9日 21時) (レス) id: a991cfb41f (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむ(プロフ) - 深遊さん» はまってくださった!?すごく感激です!!ありがとうございます!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽむぽむ | 作成日時:2018年4月3日 18時