大口 ページ46
つゆりside
『私のサッカーを見せてやるよ。この後の試合では、全力でぶっ潰す』
私がそう言うと、ルースは豆鉄砲を食らったような顔をした。
『ロシア語で言い直してやろうか？』
そう挑発すると、
「…いや、その必要はない」
ルースはそう言って、笑い出したのだ。
『…潰す』
私何もおかしいこと言ってないんだけど？
「…どの口が言ってんだよ？」
『…は？』
…ルースはまだクスクス笑っている。
そんな姿さえも絵になっているので何だか腹が立つ。
「いや、ついこの前まで"他人に尽くしてた"つゆりがいきなりそんなこと言うとは…フフッ」
『いつまで笑ってるつもりだよ』
すると、今までの表情から一転、ルースは真剣な顔をした。
私の頭に手を添えて、ぐっと距離を縮める。
「ぶっ潰されんのはつゆりの方だよ。大口叩いてる暇あったら練習したら？」
『なっ……』
ルースの細長い指が、私の髪を撫でる。
髪を一房手に取ると、どんどん口に近づけていき———
そっと、口付けをした。
「こんなんで真っ赤になるなよ」
『…うるさい』
「耳まで真っ赤じゃん」
『見るな！あーほら、もうちょっとで永世着くよ！』
「話を逸らすなよ」
『てか今の会話の中で、こんなことする必要なかったじゃん！』
「必要必要。つゆりは俺に勝てないって証明だよ」
『クッソ意味わかんない…』
永世の門の前では、タツヤが待っていてくれた。
「おかえり。"発作"の方は大丈夫だったか？」
『うん。無事コイツら連れてきた』
「よかった。じゃあ趙金雲に報告だな」
終わり
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作者名：tonight | 作成日時：2023年1月1日 17時
