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Aside
あの後も俺たちは街を見てまわり、気がつけば夕方になっていた。
「そろそろ帰る？そうでもしないと、オレがトレイくんにぶん殴られちゃうからね」
『そうですね』
トレイ先輩は相当過保護だ。
少し帰りが遅くなったぐらいですぐ電話をかけてくる。
……まあ、それは目の前にいる先輩にも共通する事なのだが。
「今日はありがとね、オレの我儘に付き合ってくれて」
『我儘だなんて、そんな……俺もケイト先輩に日頃からお世話になってるので』
そういえば、と俺は続けた。
『ラーメンの写真、撮りませんでしたよね』
まあケイト先輩がマジカメにアップするのは専らケーキなどの甘いものだし……まあわからなくはないけど。
それ以外の理由もある気がして、思い切って聞いてみた。
「ああ……バレちゃった？」
『あと、俺と撮った写真もアップしませんでしたよね』
どうしたんですか、そう言うと、ケイト先輩は微笑んだ。
いつもの笑顔じゃなくて、見た人を安心させるような、優しい笑みで。
「……うーん、なんだか今日のことは、アップしなくていいかなって思ったんだよね。上手く言えなくて申し訳ないけど……記憶だけに残ってるのもアリかなって。それはそれで特別な感じ？っていうか……」
まあ正直、と先輩は続けた。
「こんなに可愛い可愛いAちゃんは、みんなの目に晒したくなかったからね。可愛いって言えるのもオレの特権だし♪」
ここにきて、まさかのセコムが発動した。
『……そうですか』
でも、悪い気はしない。
俺もつい笑みをこぼした。
『あとそうだ、ケイト先輩。渡したいものがあって』
「……あ、もしかして、今朝買いたいものがあったって言ってたけどそれって……」
『……お恥ずかしながら』
本当は別のものを用意していた。
でも納得いかなくて、昨日の夜に思い立って急遽買いに行ったのだ。
「……わ、マフラー？」
『先輩が、前に新しいの欲しいって言ってたので……』
「……めっちゃ嬉しい。トレイくんに自慢しちゃお」
そう言って笑うケイト先輩は、心底幸せそうに見えた。
「じゃあ帰る？」
『あともう一個です』
言うべきことを、まだ言えていない。
『ハッピーバースデー、ケイト先輩』
「……ふふ、ありがと」
俺はケイト先輩に手を引かれて街を出た。
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作者名：tonight | 作成日時：2024年1月30日 11時
