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Aside
＿＿＿＿＿＿夜
『結莉さん』
「……先輩」
先に来ていた結莉さんは、俺が声をかけると振り返った。
心なしか、いつもより落ち着いているように見える。
『オクタヴィネルで別れたあと、どうなった？学園長がオンボロ寮に向かうのが見えたけど』
「“商売”をやめるよう、アズール先輩を説得してくれって」
……あのテスト対策ノートに不正は一切なく、アズール本人が過去100年分のテストを調べ、考えた上で出来上がってるものだ。
だから、教師としても強く“やめるように”とは言えないのだろう。
『……わかった。俺たちも協力するから、何かして欲しい事があったら声かけて』
「はい。……それで、先輩。話って……」
『……ああ』
俺は、真正面から結莉さんの目を見る。
……うん。やっぱりそうだ。
口を開いた。
『……仮面、被るの疲れたんじゃない？』
「……！！」
結莉さんはわかりやすく動揺する。
でもしばらくして、意を決したように口を開いた。
「……そうです。本来の私は、こんな性格をしていません」
そう言った彼女の顔は、いつもと違って引き締まっているような。
「……先輩は、私が異世界から来たのをご存じですよね」
『……確か、“ニホン”ってところだよね』
「はい。異世界に来る前の私は、柔道部に所属していました」
『ジュウドウ……』
聞き慣れない単語だ。
「はい。まあ……簡単に言えば、体術……スポーツの一種です。相手を投げ飛ばしたりとか……」
『護身術みたいなものか』
「はい。それで……同じ部活の子やクラスメイトからは、“結莉って男まさりでかっこいいね”って言われてて……私、それがどうしても嫌だったんです。だから、自分が異世界にトリップしたってわかった時、この世界では可愛くいたいって思った」
なるほど。ぶりっ子っぽい行動や言動はそこから来てるのか。
「でも、どうすれば可愛いって思われるのか、どうすればかっこいいって思われないのか、私にはわからなかった。それが行き過ぎた原因です」
『……そっか。ふーん……』
「先輩たちには、本当にご迷惑をおかけしたと思います。本当にごめんなさ『いや、別に迷惑かけられてないし、謝んなくていいよ』え……」
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作者名：tonight | 作成日時：2024年1月30日 11時
