呪箱異譚 -参-

佰弐拾陸：狙われる存在、狙う存在 ページ31

五条said

「成程…もう一つのコトリバコに、袈裟の男……ね。確かにこっちでも、最近コトリバコによる呪殺の話は入ってきてるよ」

車の中でそう答えれば、携帯越しに聞こえた実の声が小さく唸った。
コトリバコによる呪殺の事件は僕の所にも舞い込んできている。無差別に様々な人間の元に箱が送られ、殺されるというものだ。
だけど僕が気になったのは其処じゃない。

「(実の話と実を拉致った男の話を含めて推測すると、この事件は全部実を手元に呼び込む為の餌のように見える。その袈裟の男が怪しいかな)」

何が目的かは知らないけど、ぱっと見では実が無差別に呪殺をしているようにも見えるだろう。ただでさえピリついている上層部を焚き付けるような動きだ。
実の株を落として僕達呪術師の手の届かない所に追放したいのか、それとも自身の手で処刑したいのか……。どちらにせよ、相手が彼を欲しがっている事は分かった。

「僕としてもコトリバコの件はどうにかしたいと思ってたんだ。これも何かの縁だろうし、皆で力を合わせてその人を助けてあげるといい。あ、もしコトリバコを見つけたら真っ先に僕に言う事！いいね？」
『"分かりました。念の為補助監督を一人此方に寄越してくれませんか？コトリバコの被害状況を知りたいので"』
「了解！すぐに手配するから、死なない程度に頑張ってね」
『"はい"』

ぷつっと通話が切れた携帯を仕舞って、小さく息を吐く。
いやぁ〜…まさか僕の教え子を狙う奴が居るとは思わなかった。各地で発生してるコトリバコの呪殺もそれなりの強さを持つ箱ばかりで、簡単に対処できるものじゃない。明らかに術師を必要とする箱が多すぎる。

「(コトリバコは本来"呪物"として成り立つもの。実のように中の呪いが呪霊と化して人に受肉するなんてほぼ無い。となると…)」

珍しいコトリバコの受肉体を狙った呪詛師の仕業だろうか？大方研究材料か、はたまた調伏しての使役目的か……。

「…やってられないねぇ」

さてと、僕の方でも動いてあげないとなぁ。とりあえず、今から向かう先にあるであろうコトリバコを回収しますか。

「(…嫌な予感がするな……)」

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