呪箱異譚 -参-

佰弐拾参：状況理解ができない ページ28

実side

眩しい陽光が窓から差し込む。少し目を細めて光の差す窓を眺めてから、少しだけ深く息を吐いた。
少し疲れが溜まってきた足の位置を調整するように足を動かして姿勢を直す。椅子に座ったままの状態じゃ満足に寝ることも出来ないな。

『……はぁ…』

それにしても、今の現状を目の前に気が重くなる。切り抜ける作戦はたくさん湧いて出るが、どれもこれも"自分が強すぎて"行えそうにない。
……別に自分が強いと自信過剰に思ってるわけじゃないぞ？本当に相手と比べて俺が強すぎるんだ。

『どうしたもんかな……』

光に照らされて反射する埃、少し砂っぽい広い部屋、縛られた両手と両足もそろそろ痺れてきた。
そう、今俺は両手と両足を縄で拘束されている。綺麗に結ばれた縄は椅子に縛り付けられていて、軽く動かしただけじゃ簡単には解けないようになっているようだ。
…状況が理解できない？奇遇だな、俺もだ。まぁ分かっていることを言うとするなら……


俺は今、誘拐されているんじゃないか？ということだ。


俺も此処が何処なのかさっぱり分からない。見たところもう使われていない倉庫のような広い空間なことだけは分かる。誰が俺を攫ったのかも今の所分かってない。

『…アイツら怒るだろうな』

俺は何処か抜けているというか、鈍感な所があるから気をつけろと散々言われてきたのにこのザマだ。釘崎辺りにゲンコツでもくらいそうだな。実際くらうと思う。
………暇だな。

『(いつ出ても良いが、犯人見てねぇしなぁ……一応まだ居るか…)』

普通に警察に連絡してあとは帰る、普通に警察に連絡して帰る、頭の中で反芻しつつ後ろに縛られた手を理由無く動かして遊んでいると、微かにドアの軋む音がした。


ああそうだ、そう言えばこの靴音、さっき聞こえてたな……

佰弐拾肆：誘拐にしては→←佰弐拾弐：悔いの無いように

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す