【虎杖ルート】佰弐拾壱:善人を守る ページ26
伏黒side
選ばれなかった。悔しかった。
色んな感情が込みあがった。それでも飲み込んで二人を支えようと思った。
でも、俺には出来なかった。
「(情けねぇ…)」
二人にこうして慰めてもらうなんて、なんて情けねぇんだ俺は。
覚悟はしていたし、大丈夫だと思っていた。俺が選ばれなくても気持ちに揺らぎは無いと。
でもどうだ?実際はこうして泣き崩れた。自分の心が弱かったから。
「(……違う)」
違う。そうじゃない。きっと、この二人の優しさに感情が溢れ出したんだ。
虎杖は嬉しいだろうに、それでも自分の喜びより俺への配慮に回る。榎森だって俺が傷つかないような言い回しをわざわざした。
二人共、どうしようもない善人だ。優しすぎる。その優しさに俺はやられたんだ。
「…榎森泣かせたらブン殴る」
虎杖から離れ、泣き腫らした目で睨みつける。不細工な顔してるんだろうな、今の俺は。
「任せろって!ぜってー死なねぇ!宿儺にだって泣かせるもんか!」
ニッと明るく笑う虎杖の笑顔が眩しい。榎森は『今のところ負けてるけどな、お前』と苦笑しながら俺の目元に指を添えて涙を拭ってくれた。
『でもまぁ、処刑なんてさせねぇよ。絶対に。俺の恋人に手を出したやつから呪ってやる』
「重いぞそれ…」
『そのぐらいしねぇと恋人なんて務まらねぇだろ』
特級呪物の受肉体みてぇな人間から呪われたら、上層部でも一溜まりねぇだろ。俺が呆れたように言うと、榎森は楽しげに笑った。
『お前が死んでも、虎杖が死んでも、俺はそうするさ。どうなっても二人が好きだ、皆が好きだ。この日常が壊れるぐらいなら、俺は全部呪っていい』
撫でられる手が離れる。そしてふわりと柔らかな笑顔が俺に向けられた。
『これからも見ていてくれ、伏黒』
「……嗚呼」
勿論だ。俺はお前達を支える。俺が出来ることはそれぐらいだ。
処刑なんてさせねぇ。私情で何が悪い、俺は嫌なんだ。こんなどうしようもない善人が死んでいくのは。
「(きっと守って見せる。二人共、俺が)」
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九龍(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!現在は更新停止していますが、気が向いたらまた書き始めますので、その時はまたよろしくお願いいたします! (12月29日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - 一気に全部読んじゃいました!!オリジナルなのにこんなにしっかりとした深い作品ができるなんて!!すごい今感動しています!! (12月29日 21時) (レス) id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
九龍 〜くーろん〜(プロフ) - ラエルさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますね!! (5月23日 21時) (レス) id: 30fbc50707 (このIDを非表示/違反報告)
ラエル(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (5月23日 17時) (レス) @page29 id: 2dd5f200d4 (このIDを非表示/違反報告)
15 - 一気読みしましたが、めちゃくちゃ刺さりました!乙骨君や伏黒君との関係もしっかり書いてあって凄く面白かったです!男主君のやり取りとか性格、全部好きです!文章力すごすぎです!終わりかたもすっきりしていて選択が出てきたときすごい感動しました! (2022年5月5日 1時) (レス) @page28 id: 62618493d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月29日 15時