【虎杖ルート】佰弐拾:虎と共に ページ25
虎杖side
『お前が良い』
そう言って、榎森は俺の手を取った。
「…へ?」
呆然とする。握られた体温を感じ取った手から視線を上げると、紫色の瞳と視線が合った。
『お前を見ていないと、何するか分からないからな。だからお前が良い』
甘く高い声、優しい声。それが俺に降り注ぐ。言葉が耳朶を打った瞬間、不意に湧き上がった感情に身体が動いていた。
「っ〜…!榎森っ!!」
『おわっ…!』
ガバッと身を乗り出して抱き締める。強く強く抱き締める。
嬉しくて嬉しくて、どうしようもなく嬉しくて、堪らず俺は何度も榎森を呼びながら抱き締めた。
『い、虎杖…苦し…』
「あ、わ、悪ぃ!つい…っ」
慌てて離れると、榎森は『死ぬかと思った…』と咳き込んだ。マジでごめん…!
「良かったな、虎杖」
隣に座っていた伏黒が微笑む。俺は「おう!」と笑顔で応えた。
「俺もお前らが幸せになれるよう応援する。何かあったら頼ってくれ」
「勿論!伏黒ほど頼れるやつは居な……」
言葉は途中で途切れた。
「……あ…」
伏黒の目からポロポロと涙が零れる。本人は突然出てきた涙に驚いて、「何だコレ…」と呟きながら袖で涙を拭っていた。
「わ、悪ぃ…何か止まらな「伏黒」…!」
ギュッと抱き締める。背中を優しく叩いて、力いっぱいに抱き締めた。
「絶対、幸せにするから。お前の気持ちの分まで、俺が責任持って榎森を幸せにするから」
「……虎杖…」
「だから、泣けよ。見てないからさ」
そうだ。選ばれなかった方はとても辛いはずだ。なのに俺は目の前ではしゃいで…悪い事しちまったな。
『伏黒』
榎森が傍に来て、そっと伏黒の頭を撫でる。どこまでも優しい光を灯す榎森の目に、伏黒は顔を歪めてボロボロと泣き始めた。
「っ……、う……っ」
俺の肩に顔を埋めて声を殺して泣き始める。俺は伏黒の背中を叩きながら泣き止むまでずっと抱き締めた。
『伏黒……、これからも俺はお前が好きなままだ。だから見ていてくれ、俺達が道を間違えないように』
「っ…当たり前だ……!」
「っはは、伏黒が見てくれるならずっと幸せだな!」
笑う。この幸せな時間はこれからも変わらない。これからもずっと三人仲良いまま過ごしていくんだ。
俺が死ぬその時まで、ずっと。
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九龍(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!現在は更新停止していますが、気が向いたらまた書き始めますので、その時はまたよろしくお願いいたします! (12月29日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - 一気に全部読んじゃいました!!オリジナルなのにこんなにしっかりとした深い作品ができるなんて!!すごい今感動しています!! (12月29日 21時) (レス) id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
九龍 〜くーろん〜(プロフ) - ラエルさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますね!! (5月23日 21時) (レス) id: 30fbc50707 (このIDを非表示/違反報告)
ラエル(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (5月23日 17時) (レス) @page29 id: 2dd5f200d4 (このIDを非表示/違反報告)
15 - 一気読みしましたが、めちゃくちゃ刺さりました!乙骨君や伏黒君との関係もしっかり書いてあって凄く面白かったです!男主君のやり取りとか性格、全部好きです!文章力すごすぎです!終わりかたもすっきりしていて選択が出てきたときすごい感動しました! (2022年5月5日 1時) (レス) @page28 id: 62618493d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月29日 15時