佰拾陸:変な行動 ページ21
実side
高専に戻り、少しだけ身体から力を抜いた。
今日回収した鏡の呪物は既に箱に封印済み、後は報告書に今日の事をつらつらと書くだけだ。
『(今頃三人は任務か部屋でのんびりって感じか…)』
そろそろ二人に返事を返さねぇと。いつまでも二人を待たせるわけにはいかねぇし…
『でもどうやって言い出すか…』
呼び出すことには変わりないが、普通に言っても片方を泣かせる未来が見える。出来るだけ選ばれなかったショックを与えたくはない。どちらも好きと言う事を伝えながら選ぶ言い方は…
……駄目だ、思いつかない。言葉って難しいな…
「あ」
『あ?』
かかった声に反射的に声が出た。前を見ると壁の陰に隠れながら右の曲がり角の奥を見る釘崎と目が合った。
『…何してんだよ…』
「丁度良い所に来たわね…!ちょっとこっち来なさい」
『?』
何してんだ?釘崎に近づいて右奥の通路の先を覗くと、そこには伏黒が何かを考えながらずっと立ち尽くしている姿が見えた。
『何やってんだアイツ』
「知らないわよ。さっきからずっとあんな感じ。気味悪いから様子窺ってんのよ」
『はぁ…』
じとー…と伏黒を見る釘崎から視線を伏黒に移す。
何かを迷うようにブツブツと声を漏らしながら緊張した面持ちで立ち尽くす伏黒は、暫くしてから「くそっ」と声を上げて頭を雑に掻き乱す。何をそんな真剣に悩んでるんだ…?
「キモいわね」
『あまりそう言ってやるなって…本人も真剣なんだから』
苦笑して釘崎を宥めていると、不意に伏黒がこっちを見た。
「…!」
『あ、やべっ』
目が合っちまった。
「…何してるんだそんな所で」
「いやそれはこっちのセリフだわ!アンタこそそんな所で何してんのよ!」
えぇいっと言う効果音が出そうな勢いで飛び出した釘崎が指を指しながら告げる。と、伏黒は耳を真っ赤にして視線を泳がせた。
「……別に」
「別にぃ〜?理由になってないわよ!」
『まぁまぁ釘崎、落ち着けって』
どうどうと宥める。フシューッと息を吐く姿は怪獣に近かった。
「…強いて言うなら、榎森に用がある」
『あ?』
俺?
伏黒を見ると、ん゛んっと咳払いをしていつも通りの無表情に近い普通の顔に戻った。
「談話室に来てくれ。話がある」
『あ、嗚呼。分かった』
答えると伏黒は頷いて先に談話室に向かって行った。結局何だったんだ?
「あー…そういう事ね」
釘崎が納得したように溜息をつく。そして俺にこう言った。
「ファイト」
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九龍(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!現在は更新停止していますが、気が向いたらまた書き始めますので、その時はまたよろしくお願いいたします! (12月29日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - 一気に全部読んじゃいました!!オリジナルなのにこんなにしっかりとした深い作品ができるなんて!!すごい今感動しています!! (12月29日 21時) (レス) id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
九龍 〜くーろん〜(プロフ) - ラエルさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますね!! (5月23日 21時) (レス) id: 30fbc50707 (このIDを非表示/違反報告)
ラエル(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (5月23日 17時) (レス) @page29 id: 2dd5f200d4 (このIDを非表示/違反報告)
15 - 一気読みしましたが、めちゃくちゃ刺さりました!乙骨君や伏黒君との関係もしっかり書いてあって凄く面白かったです!男主君のやり取りとか性格、全部好きです!文章力すごすぎです!終わりかたもすっきりしていて選択が出てきたときすごい感動しました! (2022年5月5日 1時) (レス) @page28 id: 62618493d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月29日 15時