呪箱異譚 -弐-

漆拾捌：暫くの休息 ページ32

実side

釘崎・虎杖と別れてから、俺は自分の部屋に戻っていた。
早朝から暴れて呪力を使ったからか、いまいち体調が優れない。釘崎の部屋から出た後五条先生にその事を伝えると、そのまま家入先生の所に連れて行かれて診察された。

「"呪力の流れが滞ってるんじゃないか？大放出した直後突然流れを止めたんだ、多少の乱れが起こっても不思議じゃない"」

という診断の下、俺は五条先生から「部屋で体を休めるように」と部屋待機を言い渡されてしまった。

『…そう言われてもな…』

この何も無い部屋で待機か……
見渡す限りテレビと本以外何も無い。真っ白で統一された殺風景な部屋の中は、未だ俺らしい物なんて一つも置かれてない。
テレビを見るか？いや、昼なんて情報番組しかやっていない。なら読書か？数日とはいえ読書だけで過ごしたら全部読み終えるし読み返しだって出来るだろう。
自然と溜息が出る。ベッドに仰向けになって寝転がり、ぼんやりと天井を眺めた。

『任務も授業も無し、か…』

何だか生得領域に居た時みたいだ。自分の部屋はあるのに何も出来ないみたいな……

『……』

呪力が滞っている、か…
おもむろに手を天井に向けて突き出す。そのまま術式を展開すると、泥ではなく掌の上に光の粒子が集まり始めた。薄紫色の光が徐々に収束し、刀の形に変わる。そして弾けるように光が消えると、ズシッと刀の重さが掌に乗った。
…複製は問題無いか。でも多少の変化が術式に出てるみたいだな。

『前はもっとドロッとした感じだったよな…』

黒い泥みたいな感じだった気がする。これも俺がコトリバコの受肉体として覚醒した影響だろうか？
色々と不安だ。今回の暴走の事は先生が何とか収めてくれるらしいから心配は無いが、宿儺の指の所為とはいえ、俺はしっかりと暴走してしまった。意外と自分でもショックを受けてるらしく、ずっと頭に朝の出来事がこびりついている。
俺が危うくなると、俺の処刑が早まる。もしかしたら虎杖にも響くかもしれねぇ。それに伏黒達や先生にも……

『…考えてても仕方ねぇよな』

コトリバコの事、俺の体の事、これからの事、色々と不安で気になることは多いが…今は体を休めることが一番だ。数日間この部屋で……、……………。

………虎杖からゲームでも借りてこようかな……

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