漆拾伍：本来の姿 ページ29
実side
「成程ね。きっと恵の銃撃が効いたんだよ。衝撃で一瞬コトリバコの意識が飛んだ瞬間に、タイミング良く実の意識が戻ったって感じだね｣
先生の言葉を聞きながら、反転術式で治した自分の手を握ったり開いたりする。記憶はしっかりとある。記憶があるとさっきまでの自分が別人みたいに感じるな…実際別人なんだが。
「榎森」
『ん？』
かけられた声に視線を上げる。と、突然頬に痛みが走った。
『…！』
「……」
じんと痛む頬を押さえて伏黒を見ると、俺の頬を叩いた手もそのままに、少しだけ涙を浮かべた伏黒が俺を睨み付けていた。
「心配させんな…っ」
『……、悪かった』
頬から手を離し、伏黒の頭を撫でる。伏黒は黙って撫でられた後、嫌がるようにそっぽを向いてしまった。
『(不安にさせた、よな…)』
一時とはいえコトリバコに乗っ取られたんだ。最悪の場合だって考えただろう。伏黒、そして先生にもキツイことをさせたな…
『…すみませんでした。少しの間とは言え、乗っ取られたのは俺のミスです』
「いやいや、そんなに落ち込まないで。宿儺の指を取り込めば誰だって強くなるさ。無論、君の中のコトリバコもね」
『ですが…』
「それよりも、実が指を一つ回収してくれて助かったよ。今は封印もちゃんと機能してるし、コトリバコの自我も今は実と溶けて消えたんじゃない？これからは実がコトリバコとして生きなきゃいけなくなるけど、何があっても僕達が守ってあげるからね」
『…はい…』
先生に撫でられて、モヤモヤとした気持ちを無理やり飲み込まされる。先生は俺の言いたいことを言わせてくれない。そういうところがちょっと強引だと思う。
「大丈夫。実は実だよ」
そう言って先生は笑った。その青い瞳に、俺はどう映ってるのだろうか？本当に前と同じように映ってるのだろうか？不安だ、でもそれを言わせてくれない。
『(酷い人だ)』
それでも、知らない方がいい事もあるか…
「さ、高専に戻ろう！早く帰らないと皆が心配するからね！」
「そうですね。…榎森、行くぞ」
『嗚呼』
二人の黒い背中を見ながら、日が少しずつ昇る道路を歩いていった。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます！一気に読んで頂けるとは…！とても嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月24日 21時) (
レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして！主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました！応援してます、更新頑張ってください！ (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…！今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性？とか話の進み方とかすっごく好みです！更新がんばってください！ (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月21日 17時
