陸拾壱：交渉の果てに ページ15
虎杖side
伏黒の姿が見えなくなる。俺は小さく息を吐いて、込み上がる怒りを抑えながら小さく声をかけた。
「…宿儺」
【何だ】
目元の傷が開き、赤い瞳が俺を見つめる。俺は邪視を睨んだまま、続けて言葉をかけた。
「榎森はまだ生きてるか？」
【死んでいる、と言ったら？】
ゴキッと指を鳴らしながら、強張った身体を解す。楽しげに目を歪める邪視を前にしながら、俺の頭は不思議なほど冷え切っていた。
「お前をぶん殴る」
【ケヒッ、出来ない癖に口だけは達者だな？心配せずとも生きている。ヤツの中にある呪霊の呪力で辛うじて反転術式が効いているようだが…どのみちあの怪我では死ぬ】
「じゃあ助けろ」
【断る。俺に何の利があると？アレが負けるほど弱かった、それだけの話だ】
前興味あるとか言ってたくせに…
「じゃあ、黙ってコイツに榎森が殺されてもいいんだな？薄情なヤツ」
体が温まってきた。怪我の痛みも無い。ただ、一つだけ。
コイツは殺さなきゃ。"どんな手段を使っても"。
「お前がどう思ってようが知らない。けど、お前が助けないなら、アイツはお前にはやらない」
【…何だと？】
宿儺の目が歪む。不機嫌な声に変わったそいつに、畳み掛けるようにして言葉を投げつけた。
「いいヤツで、優しくて、強くて、頼りになる。そんなアイツが傍に居てくれるなら、俺は喜んで死ねる。でも、お前に渡るぐらいなら、榎森はここで死んでもいい」
【…！】
そうだ。何で今まで気づかなかったんだろう。
「俺は榎森が好きだ。だから、死体であっても渡す気は無い。生きてるなら見殺しになんてしない。お前みたいなヤツに、一欠片でも渡すもんか」
早く、早く殺さないと。
榎森はどんどん冷えていく。時間が無い。早く、早く…っ
「アイツが欲しいなら力を貸せ」
【……ケヒッ、ケヒヒッ！この俺を焚き付けるか！】
低く下卑た笑い声が頬に浮き出た口から発せられた。それと同時に、ぐらりと意識が引っ張られる。
思わず膝を突き、飛びそうな意識を必死で繋ぎとめた。
【生意気。生意気だなぁ？小僧。アレは一欠片も渡さぬと？冗談は休み休み言え。それは俺の台詞だ】
「う゛…っ」
視界が霞む。邪視が声を上げながら、腕を振り上げるのが見えた。
【しかし面白い。吠えるならば抗って見せろ】
「アレは、俺の物だ」
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます！一気に読んで頂けるとは…！とても嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月24日 21時) (
レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして！主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました！応援してます、更新頑張ってください！ (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…！今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性？とか話の進み方とかすっごく好みです！更新がんばってください！ (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月21日 17時
