伍拾伍:空洞の正体 ページ9
伏黒side
『…掠った』
そう言った榎森の左目は、横を掠めた何かによって綺麗に抉り取られていた。
真っ暗なそこに、あの紫色の瞳は存在しない。目元の周りの肉も巻き込んでただただ赤い液体を噴き出す空洞に、一気に身体の血液が沸騰するほど熱くなる。
「っ、くそっ!!」
榎森がやられた。あのお堂の中に居るのは何だ…っ!?いや、もう分かってるだろ…!
こんな事が出来るのは、"ヤツ"しか居ねぇ…っ
【目ェ、チョウダァイ?】
不快な高い声がお堂から流れ出した。その瞬間、まるで大砲にでも吹っ飛ばされたかのように釘と玉犬が宙に舞う。
「玉犬っ!!」
ドシャリと地面に叩きつけられた玉犬に声をかける。が、お堂から放たれたプレッシャーを感じ、その方向へ顔を向けた。
まだヤツは中に居るっ、出てきたところを叩くか…?でも榎森が受けたあの攻撃が何なのか分からない以上、下手に出るわけには…っ
『伏黒っ!!』
鋭い声にハッと我に返る。だが、遅かった。
【綺麗ナ目ネェ?】
口に何かの指が入り込み、グニッと内頬を引っ張られる。
居る。後ろに居る。でも何でだ、振り向けねぇ…!
「ッラァッ!!」
虎杖が飛び込み、背後に居た"何か"に拳を叩き込む。冷たいプレッシャーの中から解放された俺は、咄嗟に後ろを振り返った。
虎杖に殴られた"何か"は、数本の木を巻き込みながら吹っ飛ばされたようだ。土煙が上がる中から、ゆっくりと人型のそれが起き上がる。
【目ヲチョウダァイ?目ヲ、メヲォ〜】
無機質な白さを持つ子供のような身体。その顔は恐ろしく膨れ上がっており、自分の身体より3倍のでかさはある。その顔全ての面積が、1つの目によって占領されていた。
血のような赤い目が俺達を映している。その目と目が合った瞬間、ビリッと電撃のような感覚が走った。
「っ!?」
今まで傍で唸っていた白い玉犬が、突然溶けるようにして消えていく。俺は再度手を組み呼び出そうとしたが、玉犬は反応しなかった。
「(どうなってる…!?)」
玉犬が出せない…!?破壊されたのか!?いや、そうじゃない。
「っ、虎杖、榎森連れて一度退くぞ!」
「はぁっ!?何で!」
「アイツは見つめた相手の呪力を止める!視野から外れねぇと、術式が使え」
言葉は、鼻先を掠めた何かによって遮られた。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時