❤危険なお仕事 ページ5
ジャックside
夜も更け、すっかり暗くなった廊下へと躍り出る。今の僕の鼻と耳には、あのドロドロの水のような足音と特有の刺激臭がしっかりと届いていた。
「やぁ！こんな夜遅くにお散歩かい？」
声をかければ嫌な気配が僕の方を向く。僕は笑って、両手を広げた。
「散歩より楽しいことしようよ。僕と一緒に、ちょっと遊ぼう」
目を細める。ドロドロが少しだけ動きを止めたその瞬間、ソレは僕目掛けて物凄い勢いで走ってきた。
「わぉ！」
即座に後ろに跳んで距離を取りつつ、全速力で走る。元犬なだけあって、ダルの足は普段の僕より速く地面を蹴って走ってくれる。流石親友だ。でも、あのドロドロはもっと速いらしい。
真っ黒な水の濁流のようになって、ソレは僕を追いかけてくる。真っ黒な塊からあの触手のようなものが伸ばされると、僕は気配だけを頼りにその触手を避けて廊下の角まで走り抜けた。
「エースッ、ダル！」
「はーい」
「やるぞー！」
廊下の角まで走り抜けて、待機していた2人に声をかける。エースが手を振ってソレを先に進ませないように炎の壁を作り、ダルが手を振り上げて床から木の壁を作り出した。悔しいけど毒林檎とマルフィの魔法はかなり強力だから頼りになるんだよね。毒林檎は嫌いだけど。
「足止めにはなるでしょ」
「これで突破してきたら怖…」
バキッ、バキキッと音が鳴る。ダルが話し終える間も無く、それは2つの壁を突破して僕達に襲いかかってきた。
「わぁー！？エイトフットー！林檎ー！」
「マルフィ！ちょっと本格的に助けて欲しいかもー！」
「なぁんであれ突破出来るのさっ！魔法ピカイチの2人だよ！？」
もしかして中身が違うから！？中身の違いで駄目だった！？とりあえず、全速力で逃げろー！
角を曲がって3人で直線を必死に走る。ドドドドッて凄い音が背後からするんだけど！こんなホラーなエンターテイメントは要らないかなぁ！
『来たか』
「まぁ予想通りだなぁ」
「3人とも怒りを買うのが上手だ〜」
廊下の奥に三人の姿を捉える。なんか聞こえたけど今は無視！！
僕達が三人の後ろへ駆け抜けると、エイトフットがだるそうに動いた。
「分かってんだろうなぁ林檎ォ」
『動きは以前見ている。任せてもらおう』
「さて、上手く出来ればいいのだが」
一歩前に出てマルフィが口を開く。綺麗な歌声が流れると、黒いヤツの動きが突然止まった。海の魔法だ、人魚の歌は綺麗であればあるほど呪いになる。
「そら、反撃開始だァ」
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月27日 0時
