👿その正体は ページ4
マルフィside
深夜に集まった皆の話を聞いて、私は静かに考えた。皆真っ黒な何かに襲われて此処に来たと言っている。その真っ黒な何かは形も大きさも分からず、触手を伸ばしたり液体のような音を出したりとまさに未知数な行動ばかりを取ったようだ。
「唯一分かることは、私達に対して敵対的、ということか」
どれもこれも部屋に侵入して襲いかかっている。黒く水のようで、不定形な存在……
「それはきっと妖精だね」
「よ、妖精…？」
私の言葉に、この場にいる全員が目を丸くした。
「妖精って、あのひらひら〜って飛んでるやつ？」
「そうだよ。でもただの妖精じゃない、何かしらの呪いを受けて亡くなった妖精だ」
私は妖精の力を持つから分かるんだ。何度も見てきた。
「妖精は人懐っこくて悪戯好きだ。だから時に呪いの品や呪いにもちょっかいをかけたりすることがあってね。そういった妖精は皆呪いを受けて死んでしまうんだ。そしてより純粋な妖精が呪いで死んだ場合、その純粋さが呪いを吸って呪いの塊として蘇ってしまう。言うなら、妖精のゾンビだ」
何度も見てきた。茨の呪いにかかって生ける屍となる妖精たちを。私の主の城の周りでは、よく見る現象だ。だが、それが何故この場で起こっている？
確かにこのパーク内には妖精が住んでいる。人間の楽しさ、喜びを糧として生きる妖精にとって、此処は絶好の住処だ。だが私達の居るこのハイタワー内は違う。どちらかと言えば妖精が住みにくい悪意の集まる場所だ。それなのに何故…
『…そう言えば、ハイタワーには呪いの品があったな』
アップルの呟きに、私はハッとした。まさか、あれに手を出したのか…！？
「分かった…。魔法の不調はその妖精のせいだ！パーク内の妖精が迷い込んで、そして」
シリキ・ウトゥンドゥに触れてしまった。
私の言葉に全員の空気が変わる。あれに触るということは、皆命を脅かすほどの危険が伴うことを分かっているからだ。
「ここの支配者はあの人形そのものだ。そんなものの怒りに触れてしまったら、この場を形成している魔力にも変化は出る」
「つまり、あの妖精がシリキを怒らせちまったのが原因でタワー内の魔法に不調が出たってことか」
頷いて見せると、エイトフットは深く溜息をついた。こればっかりは笑って見過ごせることじゃない。一刻も早くあの妖精をどうにかしなければ、私たちはずっとこのままだろう。
「手はある。でもそれには皆の力が必要だ。どうか、協力してくれ」
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月27日 0時
