🐙仕事の邪魔すんな ページ2
エイトフットside
いつもと変わらず書類を書いていた時、それは聞こえた。
「…何だぁ?」
ピチャピチャとした水音だ。今の時刻は12時を回って深夜に差し掛かろうとしている。こんな時間から風呂に入る馬鹿は居る筈が無ぇ。
そう言えばさっきエースとジャックが話してたな。部屋に誰か居るとか何とか…
「…ジャックの部屋ね」
俺の部屋はジャックの部屋と近い。普段は互いに仕事処理で集まったりと楽なこと尽くしだが、今はそれが裏目に出たらしい。どうやらジャックの部屋に入った何かは、次に俺の部屋へと歩みを進めたようだ。
「(今の俺はジャックの体だ。戦闘力じゃあ物理的な攻撃は期待できねぇか)」
蛸足の一本でもありゃあいいんだが生憎今は使えねぇし、お得意の歌の魔法も使えねぇ。となると…
机、引き出し、部屋のあちこちにある契約書と重要書類をまとめて手に持ってから、俺はエースに聞いた魔法を試してみることにした。
「確か、手をナイフに見立てて、斬るイメージだったか」
手を翳してスッと横に薙ぐ。何もない空間がぱっくりと割れて、イメージした通りマルフィの部屋へと続く空間の入り口が出来上がった。うし、これなら避難できそうだな。
足を入れてするりと空間の裂け目に入ると、空間が閉じると同時に俺の部屋に黒い何かが入ってきたのが見えた。残念だったな、俺はもう居ないぜ。
「っと…」
床に着地して寝ているマルフィを叩き起こす。書類の束で頭を叩いてやると、寝惚け眼の俺の顔がぼんやりと俺を見た。
「……ジャック?」
「俺だぁマルフィ」
「嗚呼…エイトフット…。どうしたんだい…?」
「緊急事態だ、ちょっと起きろ」
まだ眠そうなマルフィを起こして着替えだけ済ませてから、ポケットから携帯を出してグループチャットを開く。今起こった状況を送信すれば、エースから「"今アップルの所に居るから集合"」って返信が来た。アップルかぁ…そう言えばアイツ一番遠い角部屋だったなぁ。あの真っ黒も此処からアイツの部屋まで来るのに時間はかかるか。…よし。
「アップルの部屋行くぞ。準備できたか?」
「あぁばっちりさ。後で説明してくれるんだろう?」
「勿論」
俺も何が起きてるのか分からねぇけどなぁ。ま、誰かしらが話してくれんだろ。
俺はまた空間を開けて、アップルの部屋に続く空間の中をマルフィと一緒に進んでいった。たくっ、とんだ作業妨害だなあの黒いの。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月27日 0時