♡気持ち悪い声 ページ9
エースside
「この…っ!」
ハーデスが炎を宿した手をアップルに向ける。困惑したままアップルを見ていると、彼は小さく笑いだした。
「………ふふ、ははは、はははははっ!やった、やったぞ!これが人間の肉体か!」
歓喜の声。アップルの声なのにアップルじゃない。直感的にそう思った。
まさかあのドロドロが悪霊…!?僕を庇って、アップルが取り憑かれたのか…!?
「お前を取れなかったのは残念だが、まぁいい。小娘、手を降ろせ。この男が死ぬぞ?」
僕を捕らえた木を叩いて、アップルの体を横取りした悪霊は意地悪く笑う。僕も何とか抜け出せないかと頑張って魔法を使ってみるけど、木の魔力のせいか上手く魔法を使うことが出来なかった。くそ…っ、僕のせいだ。一番最悪な事態になった…!
『ハーデス!僕のことは良いからやって!』
「でもそうしたら二人が…!」
『アップルも自分がやられたら遠慮なくって言ってた!だから、んぐっ!?』
木の枝が僕の口を塞いで拘束が強くなる。視線の先で悪霊が愉快そうに笑う顔が見えた。
「お喋りなやつは生憎好きじゃないんだ。…だが安心しろ、お前は後で我がじっくりと愛でてやる」
『…っ!』
ふざけんな、たかが人間の分際で…!
「さぁどうする小娘。この男は犠牲になってでもやれと言っているが…」
「……っ」
迷わないでっ、僕は大丈夫だから…!悔しげに唇を噛み締めるハーデスは、僕の声も虚しくゆっくり手を降ろしてしまった。それを見た悪霊はさも楽しげに笑みを浮かべた後、彼女を太い樹木で吹き飛ばした。
『ん゛んぅっ!!(ハーデス!!)』
衝撃を殺せなかった壁は呆気なく崩れて瓦礫の山を作り出す。パラパラと壁の破片が落ちて煙を立てる中に、彼女の姿は見えなかった。
「仲間想いの良い女だ。そう思わないか?」
ずるりと木が動いて僕はヤツの前に体が傾く姿勢にされる。腕も足も縛り付けられたまま、ソイツは僕の頬に手を添えてじっと見てきた。気持ち悪い…っ
「ふむ…やはり見目が良い。この体が好むだけはある」
『…っ』
「何の話だと言う顔だな。教えてやろうか?」
クスクスと笑う悪霊は手を胸に添えた。まるでうやうやしくお辞儀をするように。
「この男は貴様を好いているぞ、トランプ兵」
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時