🔥期待はしてないけど、信頼はしてるわ ページ6
ハーデスside
何よこれ、酷いじゃない。
一階のエレベーターホールが近くなるにつれて、むっとするような濃い瘴気が漂っているのが分かる。人間らしく言えば、重い空気が行く前からしてるって感じね。こんなのいつ危険な事が起きてもおかしくないわ。
「いい?着いたらすぐ準備して。どこから来てもおかしくないわ」
『はーい』
「分かった」
ハートのついた金色の斧を担いで返事するエースも、手袋を嵌め直して毒の息を漏らすアップルも目は既に真剣なものになってる。…覚悟はできてるみたいね。
「…開けるわよ」
青白い炎を灯したランプを手に、静かにドアを開ける。ギィ…と軋む音と共に開かれたドアの先は、エレベーターが待ち受ける広いホールだ。がらんとして薄暗い部屋には何もない。でも私には分かる。
「…居るわよ」
突き刺さる視線の一つ一つが、手にとるように感じ取れる。
「ニンゲンだぁ」
「ニンゲンがきたぞぉ」
「ニンゲン、ニンゲン」
辺りから嫌な声が響き始める。私が一歩下がってランプを掲げた瞬間、
「「体よこせぇ!!」」
無数の悪霊が一斉に襲いかかってきた。狙いは私じゃない、エースとアップルだ。
『アップル!』
「分かっている!」
エースの声にアップルが口に手を当て、キスを投げるように毒の息を吐く。たちまち青黒い毒霧は部屋中に蔓延して、悪霊たちに襲いかかった。
「な、何だこれはぁ…!」
「ぐるじいぃ…!」
魔法の籠もった毒ほど悪いものはない。魂すら侵す毒の息吹を吸った悪霊が次々と倒れる中、金色の閃光がまるで曲線を描くように流れていく。
『よっ、それっ、ほいっ』
軽い声に軽快なステップ。横薙ぎに払ってクルリと一回転してから下に叩きつけ、柄を足で蹴って真上に振り上げると同時に後ろに振り向きざまに一撃を叩き込む。
斧の刃に映るのは悪霊達の二度目の死に顔。ペンで落書きをするかのように滑らかな弧を描いて振るわれる斧の斬撃を、エースは澄ました顔で淡々と操っている。処刑慣れも怖いものね。
『……お化けってさぁ、痛みとか感じるの?』
毒霧の中、最後の一人になった悪霊を踏みつけながらエースが声をかける。震えて怯える悪霊に向かって、彼はギロチンのような澄んだ刃を振り上げた。
『僕、首を刎ねられた事無いからさぁ。分からないんだ。だから』
『あとで教えてね』。そう言って彼は悪霊の首を刎ねた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時