❤絶対明日は失敗できない ページ32
ジャックside
「で、何の用？」
「何の用じゃない。明日はエースとのデートの日だろう」
鏡越しに声をかけてきたアップルが溜息をつくのが見える。僕は手に持っていた筆を突きつけて、脚立から落ちないようにしながら宙に浮く鏡の向こうに居るアイツに言ってやった。
「分かってるけど今仕事中なんだよこっちは！なぁんで忙しい時に連絡してくるのさ！」
まだお昼じゃん！？夜に連絡でも良くない！？何でこう、おじいちゃんは物事が早いのかなぁ〜！
「夜中は早めに寝ないと遅れるだろう。…それはそうと、色々と支度はしたのか？」
「まぁね！僕はエンターテイナーとして現代の事情にも精通してるから〜！」
ファッションに流行りのお店、人間の世界は面白いもので満ち溢れている！見るだけで心がワクワクしちゃうよね！
「そういうお前はどうなのさ。人間用の服とかあるわけ？」
「ナメるな。しっかりと用意している」
「別にナメてないし」
薔薇を塗りながら確認してくるアップルの言葉に返事を返していく。半分ほど薔薇の木を塗った所で、「ジャック」ってアップルが僕を呼んだ。
「何？」
「…人間に化けるとは言え人の中に紛れるんだ。パーク内であってもエースに異変があったら、分かっているな」
「……分かってるよ」
そんなこと、僕が一番理解してる。赤いペンキで浸された薔薇の塗り残しを確認してから、僕は脚立から下りた。
「もし思い出したとしても、また忘れさせるだけさ」
折角捕まえた愛おしい蝶だ。みすみす逃すなんて真似はしない。
「そんな物騒な話より楽しい話でもしなよ毒林檎。あ、プレゼント何にするか考えておくんだね！」
「…！」
忘れてたな！？最後に渡そうって話したじゃないか！もうやだこのポンコツ林檎！
「後で作戦会議するから、それまでに考えておくこと！いいね！？」
そう言って僕は鏡の通信を切った。さ、残りの薔薇を塗ってさっさと館に戻ろう。
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月20日 0時
