♡大丈夫だよ… ページ13
エースside
ガチンッ、と床に刃が食い込む音がした。静かになった部屋から重い空気が消えていく。僕は暫くアップルを見てから、彼の上に乗ったままふぅと一息ついた。
「貴方…!」
『大丈夫だよハーデス。アップルは死んでない』
斧を消して降参とばかりに手を上げる。自分の炎みたいに青ざめた表情で駆け寄るハーデスがアップルを見ると、「あら…?」と声をあげた。
「首が繋がってる…?」
そう、アップルの首は刎ねられてない。でも僕は確かに首を落としたよ。
「どういうこと…?」
『…僕の国でさ、何で処刑が通用するか分かる?』
簡単な話さ。子供でも分かる簡単なこと。
『夢の中では精神、魂で皆存在している。そんな夢の国での処刑はね、魂の処刑を表すんだ。僕の斧はそのギロチン、魂だけを斬り落とす特別製。だから、僕はアップルの中に居る悪霊の"魂"を斬ったんだ。…そろそろ起きるんじゃないかな』
「……っ、げほっ!ごほっ!」
数回咳き込んで、アップルはうっすらと目を開く。見慣れた赤黒い綺麗な目が見えると、僕は心の底からほっとしたんだ。
『ほら起きた!アップル、大丈夫?』
「っ……此処は…?」
『タワテラの中だよ。でも安心して、問題は僕とハーデスで解決したから』
「…そうか…。…すまなかった二人共、苦労をかけたな」
「えぇ、全くだわ。でもいいの、怪我も何も無いだけマシ」
ハーデスも魂を回収したランプを持って顔を背ける。あはは、安心してるんだね。素直じゃないんだから。
「…ところで、何でお前は服が全開なんだ」
『あぁ、これ?…へぇ、覚えてないんだぁ〜…』
わざとらしく笑ってやると、アップルは「えっ」と間の抜けた声を漏らした。
『僕にあんなことやこんなことしたのに…うぅ……っ』
「な、何だと!?」
「野蛮でしたわ、紳士の風上にもおけない…」
「!?(ガァーンッ)」
あ、ショック受けちゃった。カッチカチに固まってる。
『冗談だよアップル。さ、早く戻ろう』
身嗜みを整えて手を差し出せば、我に返ったアップルが恐る恐る手を取ってくれた。僕は笑ってまたドアを出して通路を開く。
「エース」
『ん?』
「本当に何も無かったんだな…?」
先に行くハーデスから視線を外して振り返って、後ろで不安そうな表情を浮かべているアップルに向かって、僕は静かに笑ってあげた。
『うん、何も無かったよ』
あんなこと、君は知らなくて良い。心の中で呟いて、林檎の香りがする唇を忌々しげに指で拭った。
❤なんか様子がおかしい気がする→←🔥レディは大切に扱いなさい
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時