赤色に染まる白の君《2》 (ページ12)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:7,102 hit

🔥レディは大切に扱いなさいページ12

ハーデスside

「レディを突き飛ばして男漁り？なんて下品なやつなのかしら」

ほんと、趣味の悪いやつね。でも助かったわ、当たる寸前で"アップルが"勢いを緩めてくれたおかげで大した怪我を負わずに済んだ。

「……何故だ。叩き潰した筈だぞ」
「その体にでも聞いてみれば良いじゃない。ま、その前に貴方には消えてもらうわ」

この際仲間がどうとか言ってられないわね。
ランプを翳して高く掲げる。ランプが鐘のような音を打ち鳴らすと、辺りの樹木から一斉に青白い火の手が上がった。
私の命を吸う青い炎よ。植物の命なんてあっという間に燃やし尽くす。

「邪魔をするな冥界の炎……！」
「あらごめんなさい。でも私の目標は貴方じゃなくてよ」

私が用があるのは、貴方の後ろ。

『っ！』

火が出たのはエースを拘束している木。音を立てて崩れる木の中から手足を引っ張り出して脱出したエースは、そのまま斧を片手に悪霊へと刃を振るった。

「温いっ！」

でも相手も反応が早い。振り向きざまに放たれた枝はエースに襲いかかって、その1本が斧を持つ右腕を貫通する。木々と毒を操るアップルは正確無比の操作能力があるから厄介なのよね。まぁでも…

『残念』

エースには負けるわ。
枝が貫いた腕がトランプになって散っていく。驚く悪霊の肩を押して床に押し倒した彼は、腕をまた作り直して斧を首筋に突きつけた。

『お前の負けだ』

突きつけられた刃が鈍い光を反射して輝く。私も注意しながら近寄ると、悪霊はクスクスと笑い始めた。

「いいのか？そのまま首を刎ねれば、お前の仲間も死ぬぞ？」
『……だろうね』

……確かにその通りだわ。このまま斧を振るってもアップルの体を傷つける。どうにかして悪霊を出す方法を考えないと『でもいいよ』……え？

「なんだと……？」
『そのまま死ねばいい。その体諸共くたばれよ』
「ちょ、ちょっと何言ってんの！」

そのままだとアップルが！

「正気か貴様っ！」
『至って正気さ。でもお前は………僕の仲間の気持ちを弄んだ』

金色の刃が首に食い込む。冷ややかな赤い目が、悪霊を静かに見下ろしていた。

『首を刎ねるには充分な罪だ』

私が止める暇もなく、エースは冷えた目でアップルを見つめたまま迷いなく斧で首を刎ねた。