赤色に染まる白の君《2》 (ページ38)

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🍎その一時も終わりが近づくページ38

アップルside

『楽しかった～！』

食事を済ませてふらりと歩いているだけで、既に日が傾いていた。まだ人は多く居るが、流石に私達は帰らないといけないだろう。明日も互いにリクルーティングや自身の世界での仕事が待っているんだ、長居は出来ない。

「たくさん遊んだし、たくさん食べたね」
『今度はハイタワーのあるシーでデートだね！』
「そうだな、次はそこでデートしよう」

珍しい日だった。ジャックと目立った喧嘩をすることも無く、静かに楽しめた気がする。これもエースが居たからだろうか？

「…エース」

赤い陽の光が照らす中、エースは『ん？』と振り返って私を見る。いつもの赤い瞳が夕日を浴びてより一層光り輝くその顔に、そっとキスをした。

「…またデートしよう。3人で」
『…ん、約束だ』

笑顔で頷く彼は眩しかった。毒すら溶かすかのような温かな笑みに、思わず口元が緩む。
いずれは私にも終わりが来るのだろう。ハロウィンが終われば人間の世界でのリクルーティングは終わってしまう。その時、私はまたただの毒林檎に戻されるのだろうか？
もしそうなってしまうのなら、私はもう二度と彼には会えないのだろう。彼は夢の世界のトランプ兵、私は有限の時間の中で生きる毒林檎。きっと彼が瞳を瞬かせる合間に腐り落ちてしまうかもしれない。それほど、彼らと私の流れる時間は違う。
また、などと言う言葉は叶わないのかもしれない。週も折り返した今、残された時間は指で数える程度だ。

「ハロウィンが終わっても、絶対デートしよう」

ジャックの声にドキリと胸が跳ねる。ニヤリと笑うジャックは「"しんみりするなよ"」と口パクで私に伝えてきた。

『確かに！ハロウィンが終わっても絶対会いに行くからな！』
「…！…ふ、なら林檎のデザートでも作って待っていようか」
『やった！ジャックと一緒に食べに行くからな！』
「仕方ないから紅茶も一緒に持ってってやるよ」
「無理しなくてもいいんですよ～？」
「無理してないし！！」

喚くジャックに、宥めるエース。この慣れ親しんだ煩さも後少し。嗚呼、だからこそ。
だからこそ、今日この一日が何よりも大事に思えた。

「帰ろう。ハイタワーに」