👿手がかかる…! ページ29
マルフィside
朝の日差しが窓から差し込み、一日の始まりを告げる。優雅に自分の部屋でカモミールティーを味わっていれば、廊下側からドタドタと走る足音が聞こえた。
『マルフィッ!!』
バァンッ!という音と共にドアが開かれ、エースが部屋に入ってくる。…インクの香りが強いな?
「ちょっと待ちたまえエース、君今日は一段とインクの臭いがキツい゛っ!?」
ちょ、ちょっと待ってくれ!全身真っ赤じゃないかっ!!しかも斧まで担いで…っ!!
『聞いてよマルフィ!僕昨日ジャックとアップルにねっ「話は後で聞くから!いいかいっ、絶対そこを動くんじゃない!部屋にも入っちゃいけないよ!?」
嗚呼もう!彼は気分が高揚するといつもこれだ!
タオルにシャンプー、着替えと石鹸を用意して彼の手を引いてお風呂場へと向かう。う゛…っ、インクの臭いが凄い強い…っ
『何処行くのマルフィ?』
「お風呂だよ。君にお風呂は必要無いだろうけど、そのままじゃ私の部屋が汚れるからね」
『お風呂!?い、嫌だ!ふやけちゃうじゃないか!!』
案の定暴れ始めるエースを無理にでも引っ張ってお風呂場に連れて行く。トランプになって抜け出そうとしても駄目だぞ!
「館に居る間は人間の習わしに沿わないといけないとVが言っていたじゃないか!それに今はトランプじゃなくて人間だ、人並みに耐性もあるさ」
『でも水は怖いんだっ!』
「魔力の無い水なら消えないから!涙を流しても目が溶けたりしないだろう?それに君ぃ、雨に降られた時も大丈夫だったじゃないか!」
『やだぁー!ジャックー!』
「仲間を呼ぶんじゃない!」
嫌がるエースの服を脱がし、斧を没収して浴室に放り込む。全く…手のかかる友だ。
『マルフィがいじめる〜!』
「虐めてない!ほら、大人しくして」
風呂椅子に座らせてシャワーを出し、ビクビクと怯える彼の頭にお湯をかける。『ひっ!?』と悲鳴を漏らす彼に「目を瞑っててくれ」と伝えながら、手早く髪と体を洗った。
「どうやったらこんなインク塗れになるんだ…」
真っ赤なお湯が流れていく。このインクはきっとトランプ兵だったものから出たものなんだろう。…つまり彼は、いつも血塗れで歩いているということか?
「(嗚呼、インクで良かった…)」
血みどろの姿なんて美しくないからね。見た目より細くてしなやかな体を泡まみれにしてやりながら、暫く彼を洗い続けた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時