赤色に染まる白の君 (ページ18)

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♡舞台への一歩を踏み出してページ18

エースside

処刑に薔薇の色塗り、クロッケーの準備にお茶会の支度…その他諸々を済ませてハイタワーに戻ってみれば、登場まであと数分というギリギリの時間になっていた。
今日は一段と忙しかったから仕方ないか。あ、そう言えば臭い消しの香水付けたっけ？今日はうるさいカラスが居るからなぁ…

「随分と遅いじゃないか」

そう思った瞬間に出てきた…
真っ黒な姿に角の生えた帽子、片手に鏡を持つ彼に笑顔で『やぁマルフィ』と挨拶すると、彼は少しだけ近づいてスンッと匂いを嗅いできた。いきなり失礼だな、今日はしっかり消してきたって。

「…まぁ、香りはするが強くはないか…。及第点だねエース。後は私の次に美しい姿勢を心がけて振る舞うと良い」
『アドバイス感謝するよ茨の鳥、でも毎日確認しなくても良いんじゃないかい？』
「いいや、私が見ていないと君はすぐインク塗れで人前に出るだろう。ジャックは面白がって止めやしないから、私が君の耳に届く範囲で鳴いて知らせないと気をつけないんじゃないか？」

ううん…痛い所を突かれた気分だなぁ。まぁうるさく鳴かれるよりはましか。

「皆君を待っているよ、早く行ってあげると良い」

彼に背を押されて廊下を歩いていくと、途端に誰かが僕に抱きついてきた。焦げ茶の髪、右頬についたハートマーク。ジャックか。

『さっきぶりだねジャック、どうしたんだい？』
「遅いじゃないかエース！おかげで僕は待ってる間退屈だったよ！」
「嘘つけ、さっきまでトランプタワーしてたくせによぉ」
『待たせてしまってすまない、エイトフット』
「あー？気にしてねぇよ、お前も俺と同じ働き者だからなぁ」

ククッと笑う彼はどこか楽しげだ。僕はジャックの背中をポンポンと叩いて慰めてあげると、ジャックは顔を上げてチュッと僕のハートマークにキスをしてきた。

「待った分最高のショーにするからね！ちゃんと僕を見ててくれよ？」
『分かった分かった、ほら行くぞ』
「おっまえら…その挨拶止めろいい加減！見てるこっちがむず痒くなる！」
「良いじゃないか仲が良くて」
「マルフィ～…！！」
「そう怒らないでよエイトフット！さ、人間達とご対面だ！」

襟を直し帽子を整え、歩を進める。眩しい光の中を突き破ると、そこは沢山の人間が僕達を出迎える素敵な舞台だった。
さ、初めての登場だ。華々しく飾ろうじゃないか。