赤色に染まる白の君 (ページ13)

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♡そんな夢を見ていたページ13

『………』

夢を見ていた。気がついたら、僕は自分の執務室で寝ていた。
何だか随分と変な夢を見た気がする。僕が人間で、ジャックが居て、随分と楽しそうに話していて………

『…夢の中でもジャックに会うなんて、僕はそんなに彼が気に入ってるのか？』

思わず笑ってしまう。手を付けていた書類の続きを書き込んでうんと伸びをすれば、バンッと勢いよく部屋のドアが開かれた。

「エ～ス～！一緒にお菓子でも食べない？今あの毒りん、アップルのやつがアップルパイ焼いてるからさ～！」
『あぁ、僕も食べようかな。丁度書類を書き終えたところなんだ』
「また処刑の報告書？大変だねぇ」
『仕方ないさ。エースである僕は一番であり女王陛下の信頼も人一倍、いやトランプ一倍請け負わないといけないからね』
「そんなことより薔薇を塗ろう薔薇を！きっと楽しいよ～？それに僕とも遊んでくれよ！」
『あと3つの処刑を済ませた後にね』
「ケチ～！」

曲がりくねって歪んだ廊下をジャックと共に歩き、廊下に飾られた一枚のへんてこな絵の前で立ち止まる。先にジャックが絵の中に手を突っ込むと、トプンッと水の中に入るように手が絵の中に消えた。

「よっと」

そのまま絵の中に消えていくジャックを見送ってから追うように自分も絵の中に入る。暗くてどろどろしていて油絵のような色合いの世界が一瞬見えた後、

「お、来たようだね」
「遅いぞ二人共～！もうお腹ペコペコだよ！」
「そこの背の低いジャックは半切れにしておくか」
「何で僕だけ量減らすんだよバカ林檎！」
「相変わらず騒がしいですわ」
「全くね…」

いつものメンツが揃った綺麗な部屋に放り出される。
豪華なシャンデリア、絵画の飾られた暖炉付きの洋室の真ん中には大きいソファに大きいテーブル。他の世界から来た手下の面々を眺めてから、僕は友であるダルメシアの隣に座った。

『遅れてごめんよ。ちょっと仕事が長引いたんだ』
「そうなの？あ、でもいつもよりインクの匂いが強いかも！」
「ご苦労さまですわエースさん」
『ありがとうヴェール嬢。その一言で僕の疲れは癒やされてしまうよ』
「まぁ、お口が達者ですこと！」
「口説いてないでさっさと食べるぞ。ほらエース、君の分だ」
『ありがとうアップル、頂くよ』

ほくほくのアップルパイにいつもの紅茶。この一時が至福の時間だ。
…そう言えば何かを言おうとしていたのに忘れてしまった。まぁ、どうでもいい事だったんだろう。